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2017年3月13日 (月)

読書雑記(196)高田郁『あきない世伝 金と銀 三 奔流篇』

 高田郁の最新作『あきない世伝 金と銀 三 奔流篇』(ハルキ文庫、2017年2月)を読みました。本書は時代小説文庫の書き下ろしです。

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 十三夜の月を観ながらの求婚は、月光の下でのシーンに期待をしていた私には、十分に満足でした。天満橋へ二人でそぞろ歩きもいいものです。力強く第3作の始まりです。
 高田の作品には、目と鼻と耳の感覚が研ぎ澄まされています。何気ないところに、香りがします。登場人物の動きはアニメっぽいにもかかわらず、こうした五感が言葉で伝わってくるところが、この作者の特質のように思います。
 中でも、浮世草子の余白に呉服店である五鈴屋の宣伝を載せる発想は秀逸です。出版文化の台頭を、うまく引き込んでいます。そして、物語の背後に、しっかりと女の文化史が読みとれます。なかなか奥の深い設定となっているのです。
 住吉大社での宝の市の話があります。難波の賑わいも、しっかりと描き込まれているのです。
 「せやさかい、呉服では長いこと西陣の独擅場(振仮名「どくせんじょう」)やった。」(141頁)とあります。「独壇場」とせずに、当時の実態を意識した用字で表記しています。
 人形浄瑠璃や歌舞伎など、伝統芸能にも目配りをして、江戸期の世相を通して文化を読者に伝えようとしています。これが、この物語に厚みをもたらしているのです。こうした視点が、小さくなったお店を繁盛させるためのアイデアを生み出す元となります。惣次と幸とが知恵を出し合い、さらに行動する活気が、小気味よく展開していきます。
 井原西鶴のことばがひょいと顔を出すのが、これも一つの味付けになっています。また、石田梅岩の『都鄙問答』が、この物語に一本の筋を通しています。これらのことが、骨太な物語にしています。その意を汲んで、近江の絹織物をめぐって惣次の立ち位置が危うくなります。話の続きは次巻へと。
 本作は、図太く生きる、というのが底流にあります。機知に富んだ幸と五鈴屋のこれからが、ますます楽しみです。【5】
 
 
 

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NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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