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2017年2月13日 (月)

『源氏物語』の池田本と国冬本に関する渋谷氏の問題提起

 渋谷栄一氏の「楽生庵日誌(2月11日)」で、以下の報告がありました。


【2月10日(金)】
越野優子『国冬本源氏物語論』と伊藤鉄也「池田本『源氏物語』本文校訂「桐壺」(第一版)」を読みながら「源氏物語」の本文研究について考える。文学の根源が言語藝術としての感動にあるならば、別本は通行本文では窺い知ることのできない「源氏物語」の豊かな表現と叙述をもったテキストの一つとして興味深い。通行の定家本原本とその臨模本そしてその系統の最善本である大島本を底本とした校訂本と同じ定家校訂本系統とされる池田本の校訂本と違いのあることは分かるが、なぜ違うのか、そして定家校訂本系統としてどちらがよりすぐれた表現世界をもったテキストなのか、そこが知りたい。

 この「大島本」と「池田本」とに本文の違いがあることについて、なぜそのような違いが生まれたのか、その表現世界の違いは何か、それぞれがどのように読まれてきたのか、などなど、問題は山積しています。この意味を考えることは、『源氏物語』の研究において今後とも重要な研究課題だと言えるでしょう。
 これからの若手研究者が、その新鮮で柔軟な感性によって、この問題に果敢に挑んでいただきたいと思っています。

 渋谷氏の記事にある「池田本『源氏物語』本文校訂「桐壺」(第一版)」とは、先月末に私家版として試験的に印刷して配布し始めた冊子を指しています。


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 この池田本「桐壺」の校訂本文を手元に置いて確認したい方は、本ブログのコメント欄を使って、郵便番号・住所・氏名をお知らせください。「桐壺」巻の校訂本文は無料でお渡しするものなので、折り返しお届けする手順(郵送の種別と送料等)をお知らせします。

 なお、この池田本の校訂本文を作成している背景や経緯については、「NPO法人〈源氏物語電子資料館〉のホームページ」をご覧ください。
 
 
 

2017年1月13日 (金)

〈第6回 池田亀鑑賞〉の候補作を募集中です

 〈第6回 池田亀鑑賞〉の募集は、平成29年3月末日が〆切りです

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 応募は、一般から、あるいは、学術機関、各種法人、出版社など推薦人から推薦を受けたものとなっています。自薦・他薦を問いません。

 応募作(平成28年4月1日〜平成29年3月末日刊行奥付および発表分)の中から、〈池田亀鑑賞選考委員会〉により選ばれます。

 応募にあたっては、刊行物および掲載誌を2部、下記の〈池田亀鑑賞事務局〉に送付してください。
 また、【タイトル・氏名・住所・電話番号・メールアドレス・所属】を明記の上、【要旨(800字〜2000字程度)】も添えてください。


平成29年3月末日 必着

〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-44-11
新典社内 池田亀鑑賞事務局
TEL:03-3233-8051  FAX:03-3233-8053

 これまでの受賞作は、以下の通りです。
 弛まぬ努力が結実した成果に対して贈られました。

 平成24年度 第1回受賞作 杉田 昌彦氏『宣長の源氏学』(新典社)
 平成25年度 第2回受賞作 岡嶌 偉久子氏『林逸抄』(おうふう)
 平成26年度 第3回受賞作 須藤 圭氏『狭衣物語』(新典社)
 平成27年度 第4回受賞作 滝川 幸司氏『菅原道真論』(塙書房)
 平成28年度 第5回受賞作 畠山 大二郎氏『平安朝の文学と装束』(新典社)

 この〈池田亀鑑賞〉の趣旨は次の通りです。


「池田亀鑑賞」は、文学の研究基盤を形成する上で、顕著な功績のあった研究に対して贈るものです。
その地道な努力を顕彰し、さらなる成果の進展を期待する意味を込めています。
「池田亀鑑賞」は、伝統ある日本文学の継承・発展と文化の向上に資することを目的として、池田亀鑑生誕の地である日南町と池田亀鑑文学碑を守る会が創設しました。

 選定にあたっては、「前年に発表された『源氏物語』を中心とする平安文学に関する研究論文や資料整理及び資料紹介に対し、学界に寄与したと評価されるもの1作品を選定します。」となっています。
 つまり、「研究論文や資料整理及び資料紹介」が対象であることが、この池田亀鑑賞の特色です。

 選考は、以下の6人の委員があたります。


伊井春樹(会長)
伊藤鉄也(委員長)
池田研二
妹尾好信
小川陽子
原 豊二

 選考委員の一人として、池田亀鑑賞のホームページに私は次のコメントを寄せています。


文学研究の基礎を支える資料を整理し、成形し、提供する営為には、多大な時間と労力と根気が必要である。
そして、こうした作業や仕事にこそ、弛まぬ努力と継続への理解と応援が必要である。
池田亀鑑賞は、日頃の地道な調査研究活動に光を当て、さらなる励みと新たな目標設定を支援するところに意義があると思っている。
達成したものばかりではなく、進行しつつあるものも含めて、研究環境の整備に貢献した仕事を顕彰したいと思っている。

 コツコツと研究を続けて歩んで来られた成果が、今回も応募作として並ぶことを、大いに期待し、楽しみにしています。
 今年もすばらしい作品の応募があることでしょう。
 積極的な応募を検討してください。

「池田亀鑑賞のホームページ」もご覧ください。
 
 
 

2016年7月22日 (金)

《仮名文字検定》2018年夏より実施のお知らせ

 一昨年より検討を重ねていた《仮名文字検定》について、検定試験の準備が整いましたのでその実施概要を公表します。

 今から2年後(2018年)の夏に第1回を実施します。
 近日中に公開するホームページを、おりおりにご確認ください。
 
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■《仮名文字検定》実施概要■

         (2016.7.22 公表)

◎主催
 仮名文字検定委員会

◎協力
 株式会社 新典社
 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉

◎仮名文字検定 事務局
 〒101-0051東京都千代田区神田神保町 1-44-11 新典社ビル
 Tel 03-3233-8054(10:00〜12:00 および 13:00~17:00、土・日・祝日を除く)
 ・問い合わせ用メールアドレス:
    info@kanakentei.com
 ・公式ホームページ(近日公開):
    http://www.kanakentei.com/

◎検定趣旨
 《仮名文字検定》は、平安時代から伝わる平仮名を幅広く学び、その運用能力を高め、日本の古典文化を継承する中で、日本語の読解と表現世界を豊かにすることを目的として実施するものです。
 日本古典文学における中古・中世の時代に普及していた数多くの仮名文字が、広く一般的にその習得の意義を再評価されるようになりました。日本文化の理解を深め、文化資源としてさらに身近なものにするためにも、《仮名文字検定》の必要性が求められる時代が来たといえるでしょう。
 現在私たちが使っている平仮名「あいうえお〜」は、明治33年に1書体に制限され統制されてからのものです。それまでは、多くの仮名文字が使われていました。現行の「平仮名」以外を「変体仮名」と呼び、昭和初期までは普通に流通していたものです。
 日本の古典籍や古い印刷物には、さまざまな書体の仮名文字を用いた文章が記されています。今でも、博物館や資料館のみならず、街中の書道展や看板などでも、変体仮名をよく見かけます。
 明治時代後半から使わなくなってきた変体仮名が、日本文化の見直しと再発見の中で、新たに注目を集めるようになりました。「国際文字コード規格」(ユニコード化)に登録するために「学術情報交換用変体仮名」が提案され、国際的な場で承認に向けて審議が進んでいることは、変体仮名の再認識を促し新たな活用が期待できるものだといえます。
 多彩な文字をちりばめて表現された、見た目にも美しい仮名文を読んで理解する能力を高めませんか。変体仮名を使った楽しい遊びの空間に身を置くこともできます。時代を超えて情報と気持ちを交わす技術を習得する上で、この《仮名文字検定》を豊かな日本文化の理解と継承の鍛錬道場として活用していただくことを望んでいます。
 なお、《仮名文字検定》では、点字と立体文字が触読できる視覚障害者も受験できる体制を用意しています。

◎検定内容
 仮名文字に関する知識と読解力を問う

◎検定開催年月日
 年1回8月末開催
 第1回は2018年8月末
 (第8回 日本文学検定と同時開催)

◎開催場所
 東京・京都

◎受験料(個人受験・団体受験・学割・再受験)
 4,900円(学割・再受験 4,600円)(税込)

◎受験資格
 学歴・年齢その他制限なく、どなたでも受験できます。
 ※ 視覚障害者は、点字と仮名文字の触読による受験ができます。

◎受験時間
 60分

◎合格基準
 新人級:60%以上の正解
 玄人級:70%以上の正解
 達人級:90%以上の正解
 ※ 試験で獲得した点数により、各級が決定される方式。

◎問題形式
 全50問筆記

◎公式テキスト
 『仮名文字の達人』
  (A5判・192頁・本体1500円・新典社発行・2017年12月末)
 〈目次〉(案)
   1 仮名の歴史と書道史(高城弘一)
   2 仮名の字母の基礎知識(伊藤鉄也)
   3 読み・書き・連綿の知識(田代圭一)
   4 未来の仮名文字活用法(高田智和)
   5 視覚障害者の触読実践(渡邊寛子)

◎申込み方法
 クレジット(公式ホ一ムページ)
 郵便振替(リーフレット付載)

◎関係者(敬称略、50音順)
・監修者:高城弘一(大東文化大学)
     高田智和(国立国語研究所)
     田代圭ー(宮内庁)
     渡邊寛子(福島県立盲学校)
・協力者:淺川槙子(国文学研究資料館)
     須藤圭(立命館大学)
     畠山大二郎(愛知文教大学)
・企画運営総括:伊藤鉄也(国文学研究資料館)
 
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2016年4月22日 (金)

NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の定款変更で登記の準備中

 昨年12月に申請したNPO法人〈源氏物語電子資料館〉の定款変更に関して、先週の4月14日に京都市長より正式に認証書をいただきました。


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 それに伴い、「指令書の到達した日から2週間以内」に、京都地方法務局へ変更の登記申請を行うことになっています。つまり、この4月27日までに指定の書類に基づいて登記の申請をする必要があるのです。

 その書類を提出するにあたり、このところ慣れない書類作りに当たっていました。
 次の法務省のサイトに、その申請にあたっての説明があります。

http://www.moj.go.jp/content/001175371.pdf

 しかし、こうしたことに疎い私には、わからないことだらけです。

 いつもお世話になっている、京都市文化市民局地域自治推進室市民活動支援担当の小松原さんに電話でお訪ねしました。
 そして、直接の担当部局である京都地方法務局へも問い合わせをしました。その結果、東京に居ながらこの申請をするのであれば、東京にあるNPOのサポートセンターで書類を見てもらい、不備などがないかを確認してから郵送で申請したらいい、とのアドバイスをいただきました。

 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の運営に関わっている仲間にいろいろと情報を提供してもらいながら、どうにか書類を調えました。
 そして、設立の時にもアドバイスをいただいた、飯田橋のセントラルプラザにある東京ボランティア・市民活動センターへ、提出予定の書類を持って行きました。

 今回も、相談担当専門員の増田さんのお世話になりました。
 じっくりと事情説明を聞いてくださいました。そして、的確なアドバイスをいただけたのです。ありがたいことです。

 この東京ボランティア・市民活動センターは、飯田橋駅に直結しているビルの10階にあります。交通の便が非常によい所です。しかも、火曜日から土曜日までは朝9時から夜9時まで、日曜日は朝9時から夕方5時まで開いています。休館日は、月曜・祝日・年末年始です。

 今日は午後9時までだったので、本当に大助かりです。
 NPO法人は専業者ばかりではないので、こうした配慮はうれしいことです。お役所仕事ではないことと、親身になって相談ができるので安心できます。

 それにしても、NPO法人設立からこれまでを振り返ると、法務局にはいろいろと難儀な対応をされたことしか思い出せません。
 今回の定款変更にともなう登記申請において、これからどのようなトラブルに巻き込まれるのか、今から楽しみにしています。

 今後、NPO法人を運営なさる方のためにも、設立準備から設立直後までの経緯を、以下に時系列で列記しておきます。
 いろいろとクリアーすべき問題が山積していることがわかります。
 それでも、京都市の担当者などから、懇切丁寧な説明やアドバイスがいただけたので、ずぶの素人でもこうして無事に設立し、定款の変更などがおこなえるのです。

 一人でも多くの方の手助けや支援になることであれば、とにかく前に向かって動き出すことに尽きます。
 当法人には、まだまだ難関が待ち受けていることでしょう。しかし、多くの支援者と一緒に考え、行動していれば、越えられない壁はないと思っています。

 みなさま、今後ともお力添えのほどを、どうかよろしくお願いいたします。
 
------------- 設立準備段階から設立直後まで ---------------

「NPO法人の認証書の交付を受けました」(2013年02月02日)

「NPOの法人印を精魂込めて彫っていただく」(2013年02月04日)

「法人登記のため小雨の中を走り回る」(2013年02月05日)

「NPO法人の口座開設でまた名前が問題に」(2013年02月09日)

「不愉快だった銀行の対応」(2013年02月15日)

「NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の銀行口座開設の報告」(2013年02月18日)

「法務局のミスで市役所への登記完了届出書が不受理になりました」(2013年02月19日)

「三井住友銀行に口座を開設できました」(2013年02月24日)

「NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の新会員募集のご案内」(2013年03月02日)

「NPO法人〈源氏物語電子資料館〉のホームページ更新」(2013年03月18日)

「NPO〈GEM〉に『十帖源氏』の資料を公開」(2013年03月19日)
 
 
 

2016年4月16日 (土)

古写本をめぐって慌ただしい中でも充実した一日

 午前中に開催された、平成28年度NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の総会は、予定していた議案がすべて了承され、無事に終了しました。
 和やかな中で、今後の活動や運営に関する多彩な申し合わせ事項も、うまくとりまとめることができました。

 今回の会場は、2014年03月23日に「NPO設立1周年記念公開講演会」のイベントをした、東京都中央区にある築地社会教育会館でした。


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 話し合った内容については、後日NPO法人〈源氏物語電子資料館〉のホームページでお知らせします。

 参加してくださった会員のみなさま、そして委任状をお寄せくださったみなさま、ご協力をありがとうございました。そして、これからも、活動の支援に関してよろしくお願いします。

 閉会後、みなさんと一緒に、ブラブラと銀座4丁目の鳩居堂3階にある画廊へ移動しました。


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 会員でもある宮川保子さんが、『源氏物語』の宇治十帖の作品展をなさっているからです。

「宮川保子さんの宇治十帖と継色紙の個展」(2016年03月16日)

 ご自身で料紙の装飾を摺る際に使われる版木や、継ぎ紙の手法について、実作をもとにして説明してくださいました。多くの展観者の方々がいらっしゃる中で、ありがたいことです。

 その後、私が行っているコナミスポーツクラブ銀座の上にあるレストランで食事をしました。
 京都からお出でいただいた石田さんも、ありがとうございました。

 みなさんとお別れしてから、私は淺川さんと一緒に、永井和子先生とお話ししたいことがあったので、先生のご自宅にうかがいました。駅前でと思っていたところ、先生の温かいお誘いのままに、お言葉に甘えてご自宅に寄せていただくことになったのです。
 過日、永井先生が送ってくださった、ご自宅に舞い降りた鷺がいた庭を、これがあの、と感激して拝見しました。

「京洛逍遥(392)京洛の三日月と東都の白鷺」(2016年03月12日)

 残念ながら、初夏に向かう今日は、あの白鷺はいませんでした。
 私の話を聞いてくださり、そして、たくさんのありがたいお話をうかがうことができました。いつも、ありがとうございます。

 その先生のお話の中に出てきた、古典和歌集である「伊勢集」の摹本を作成なさった藤原彰子さんの作品を拝見することができました。


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 ちょうど、銀座で宮川さんの作品を見てきたばかりだったので、同じことを指向し、挑戦なさっている方の存在に驚きました。最初は、宮川さんと藤原さんは同一人物ではないか、と思うほどに、その作品に対する姿勢が同じなのです。

 さらに私は、装飾料紙を駆使して『源氏物語』の書写に挑まれた右近正枝さんのことも思い出しました。


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 宮川さんは、新潮日本古典集成の活字校訂本をもとにした創作かな書道であり、右近さんは岩波旧大系本の活字校訂本文を自在な仮名書きにして書いておられます。

 私は、このお2人が書写なさっている底本の選定に対して、大いに不満の意を伝えています。2人ともに、活字で印刷された校訂本文を用い、現代向けに組み立てられた本文を自分が思う通りの変体仮名に変えながら書写なさっているのです。
 私は、活字校訂本文を使っての書写は止めてほしい、と伝えています。臨書をする中で、仮名の使い分けで芸術性を追究するのであれば、それは『源氏物語』の本文史の中に定位できると思います。しかし、活字校訂本文を変体仮名で書写して後世に残す意義は、弊害こそあれ、何もないと思っています。
 紛らわしい新写本を後世に残すべきではない、というのが私見です。

「何故かくも愚行を誇らしげに」(2010/9/26)

 このことは、今後も言い続けていきたいと思っています。

 右近さんは、数日前に宮川さんの書道展にお出でになったそうです。

 宮川さん、右近さん、そして藤原さんと、それぞれ一歳ずつ違う、同世代の方です。しかも、期せずして3人の女性が、大阪・奈良・三重という関西にご縁のある方なのです。
 人との出会いとつながりに、これまでも恵まれてきました。今回も、この3人の方との接点を求めて、少し動いてみようかと思っています。
 
 
 

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2016年4月11日 (月)

NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の定款変更が認証されました

 昨年末に、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の定款を変更することについて、認証の申請をしたことをお知らせしました。

「NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の定款変更認証申請を終えて」(2015年12月29日)

 所定の縦覧期間を経た上で、本日あらためて認証された旨の連絡が、京都市役所内にある京都市文化市民局地域自治推進室の市民活動支援担当の方からありました。
 3月下旬に、提出した申請書における軽微な誤記の指摘を受け、すぐその表記の訂正を行い、再提出しました。それを受けて、最終的な判断がなされたようです。

 変更の詳細は、上記ブログで確認できます。

 関係者のみなさまには、本年度よりあらためて新しい定款で活動を展開していくことをお知らせいたします。
 詳しくは、今週末に開催される総会で報告することになります。

 今後とも、変わらぬご支援をいただけますよう、よろしくお願いいたします。
 
 
 

2016年3月26日 (土)

NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の打ち合わせ会

 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の運営メンバーが集まり、今年度の活動の確認と、4月に開催する総会及び来年度のことについて、3時間にわたって入念な打ち合わせをしました。
 会場は京橋区民館です。東京駅から銀座に向かって歩いてすぐの、非常に便利な場所にあります。中央区は使い勝手の良い公共施設が多いので、NPO関係の会合にはこの一帯の施設をよく使っています。

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 今日の主な議題は、以下の通りです。
 (1)定款変更についての確認
 (2)来年度の活動について

 この内、来年度の活動に関して話題としたことを、記録として列記しておきます。


■イベント
・平成28年4月1日よりスタートする「障害者差別解消法」に対応した活動
  (古写本『源氏物語』の触読研究の支援)
・第2回 源氏物語散策
  (京都御所周辺)
・第5回池田亀鑑賞の後援
  (鳥取県日野郡日南町で開催)
・〈第8回 インド国際日本文学研究集会〉の支援
  (ニューデリーにおける集会の運営と研究発表)
■学習会
・日南町で古写本『源氏物語』を読む会
  (町民のみなさまと池田亀鑑を追体験する)
・日比谷図書文化館「古文書塾てらこや」本科コース
  (翻字者育成講座で歴博本「鈴虫」を読む)
■データベース構築
・古写本『源氏物語』の変体仮名翻字版を推進
・池田本(翻字・校訂本文)
・『十帖源氏』(翻字、校訂本文、現代語訳)
■その他
・総会の議題と報告事項の確認
・理事の交代と新任理事の増員
・ニューズレター第3号の発行
・NPOのパンフレットとロゴの作成
・入会金と会費の扱いを弾力的に運用
・会費徴収の時期は総会前に
・ホームページの充実
・文化庁の京都市移転に伴う対応

 計画と予定は盛りだくさんです。
 みなさまのご支援をいただきながら、着実に進めていくつもりです。
 4月からの新年度も、どうぞよろしくお願いいたします。
 
 
 

2016年1月15日 (金)

日比谷でハーバード本「蜻蛉」巻を読む(その26)

 最初に連絡をいつくか。

 日比谷図書文化館の〈特別講座 翻字者育成講座〉の本年第3回目は、来月の2月18日(木)となっています。しかし、私の海外出張と重なったため、一週間先の25日(木)に変更となります。この日だけは、これまでのB教室ではなく、A教室です。お間違いのないようにお気をつけください。

 もう一つ。
 今月23日(土)に、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉のイベントとして、東海大学で開催中の「桃園文庫展─池田亀鑑の仕事─」にご一緒に行きませんか、というお誘いをしました。

 参考までに、私が編集した『もっと知りたい 池田亀鑑と『源氏物語』 第1集』(2011年)と『同 第2集』(2013年)を回覧しました。

 このイベントの詳細は、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の「ホームページとブログ」でご確認ください。
 参加者は当法人の会員となっています。これを機会にご入会いただけると嬉しく思います。

 さて、日比谷図書文化館の講座では、鎌倉時代の変体仮名だけではなく、近現代の変体仮名も折々に確認しています。

 昨日は、山田美妙の『夏木立』(明治21年)の巻頭部分を見ました。
 『夏木立』の序文である「まへお起」は、さまざまな変体仮名が見られます。3行目に「籠能と里古」とあり、6行目に「志えィくすぴィあ」とあることなどは、注意しておいていいと思います。


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 この序文に続く本文は、次のようになっています。


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 ここで、最初の見出し「籠の俘囚」の「俘囚」に、「とりこ」と振り仮名が振られています。ところが、先の序文では「籠能と里古」となっていました。
 当てられた仮名が違うのです。序文の方の「能」「里」「古」は変体仮名です。

 また、序文と本文の字体(フォント)も違います。序文の方が、格調の高い字体となっているのです。これは、近世以来の伝統のようです。この序文の字体は清朝体だとか。
 この点について私はまだ不勉強なので、ご教示いただけると助かります。

 ハーバード本「蜻蛉」巻は、23オモテから24オモテL5までの3頁分を確認しました。

 ナゾリがある箇所について少しだけ記しておきます。


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 ここで書写者は、まず「おもへ多万へつゝ」と書いたと思われます。そして、「おもへ」の「へ」が間違っていることに気づき、その「へ」の上から「飛」をなぞったのです。
 「飛」が後で書かれたものであることは、「おもへ多」の「多」と、なぞられた「飛」の線が交錯していることからわかります。

 もし、「おもへ」と書いてすぐに「へ」の上に「飛」をなぞったとすると、続く「多」の起筆部分が「飛」とはぶつからないように書いたはずです。

 あるいは、もう一つの可能性も考えられます。
 「おもへ多万へ」までを書き、間違いに気づいて「へ」の上から「飛」となぞってから、続く「つゝ」を書いたとしてもいいでしょう。
 「飛」となぞったタイミングに関して、もう一つの可能性として提示しておきます。
 
 
 

2016年1月13日 (水)

現在取り組んでいる科研の新年会で確認したこと

 現在取り組んでいる2つの科研では、研究員・補佐員・補助員の3人の方にお手伝いをしていただいています。この3人の英知と努力と根気なくして、あれだけの膨大な情報を集積し、手際よく整理し、迅速に幅広く発信することは叶いません。

 新年を迎え、この仲間4人で、新年会を兼ねて今後の打ち合わせをしました。

 立川駅のレストラン街にある、自然食バイキングのお店が折々に行くところです。これは、外での食事が自由にできない私にとって、非常に使い勝手のいいお店です。食べられる食材の料理を、その時に食べられる分量だけいただけばいいからです。

 今年は、2つの科研が共にラストランとなるので、以下のような課題とその問題点のとりまとめを、みんなで確認しました。
 思いつくままに列記しておきます。


(1)「海外源氏情報」と「古写本の触読研究」は、来年3月に私の定年とともに終了となる。
(2)両科研で収集・構築した情報資源やデータ群は、来年4月以降はNPO法人〈源氏物語電子資料館〉に維持管理してもらう。
(3)公開中の電子ジャーナルやダウンロード可能なデータは、その利活用を積極的に広報する。
(4)今秋、インド・デリーにおいて『源氏物語』の翻訳に関する〈インド国際日本文学研究集会〉を開催する。
(5)『十帖源氏』の多言語翻訳に関して、インド8言語の試行版に着手する。
(6)『源氏物語』の多言語翻訳と翻訳研究史に関する研究成果を、印刷物としてまとめる。
(7)目が不自由な方々の触読環境を整備して、古典文学の領域から情報発信を心がける。
(8)現行の平仮名と変体仮名の触読字典作成のため、文字の説明文を完成させ、公開する中で補訂を加える。
(9)研究者に限らず社会人や学生に、ホームページ及び広報活動を通して、刺激的な情報を発信する。
(10)当面は、『海外平安文学研究ジャーナル第4号』と『触読研究ジャーナル 創刊号』の発行に全力を注ぐ。

 とにかく、これまで通り前を見すえて、ひたすら走っていきます。
 折々に、ご理解とご協力をいただけると幸いです。

 情報発信母体となる科研のホームページは、以下の通り、これまでと変わりません。

「海外源氏情報」(基盤研究A)
 
「古写本『源氏物語』の触読研究」(挑戦的萌芽研究)
 
 多くの方々から、ご意見や情報をお寄せいただけることを、心待ちにしています。
 
 
 

2015年12月29日 (火)

NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の定款変更認証申請を終えて

 特定非営利活動法人〈源氏物語電子資料館〉の定款を変更することになり、京都市長宛の「定款変更認証申請書類」を提出しました。
 これは、特定非営利活動促進法第25条第3項に則った認証を受けるために申請したものです。

 今夏から市役所の担当者と相談しながら、書類を整理して来ました。それが昨日、無事に受け付けてもらえました。

 京都市役所の文化市民局地域自治推進室市民活動支援担当のKさんには、何から何まで懇切丁寧な説明と対応をしていただきました。この窓口の方のご理解とご協力なくして、私一人での手続きはとてもできませんでした。
 本当にありがとうございました。

 今回の変更点を、公告された内容の確認を兼ねて、ここに明記しておきます。
 ただし、1ヶ月以内に軽微な補正等を指示に従って行うことになるはずなので、これはあくまでも昨日時点での内容であることをお断わりしておきます。

 これが認証されましたら、京都地方法務局で変更登記の手続きを行います。

 今回変更するのは、第3条、第4条、第5条、第12条です。

 それぞれの変更の理由は、以下の通りです。
 変更するに至った最大の理由は、本年正月にこれまでの翻字方針を「変体仮名翻字版」に完全に移行したことにあります。

 この変更を機に、さらに本NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の発展を期したいと思っています。
 みなさまの変わらぬご理解とご協力を、どうかよろしくお願いいたします。
 


  【変更の理由】

 第3条
  構築しているデータベースの内容とその成果を公開する媒体が日々多様化している。それに即応した活動を重視した事業を実施するため。

 第4条
  社会教育の立場からの要望と、情報化社会との関わりを明確にするため。

 第5条
  活動の成果を印刷媒体のみならず、通信手段を最大限に活用した事業を展開するため。

 第12条
  活動を京都と東京等で幅広く展開するため。


 
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【変更後】
(目的)
第3条 本法人は、『源氏物語』の本文に関連するあらゆる資料及び情報を、調査・収集・整理・修正・追補することを活動の原点とする。そして、その知的資産としての情報の維持管理を次世代に継承する中で、さらなる発展に資することを目的とする。
 併せて、『源氏物語』が幅広く理解されることを願い、国際的かつ社会的な日本文化の理解を深める活動も展開する。

    ↑

【変更前】
(目的)
第3条『源氏物語』の本文に関するデータベース化は、『源氏物語別本集成』と『源氏物語別本集成 続』の刊行を通して、約22万レコードのデータベースとして構築が進行しています。今も更新の手が加えられ、日々成長しているデータベースです。
 本法人は、『源氏物語』の本文データベースに関連するあらゆる資料及び情報を、調査・収集・整理・修正・追補することを活動の原点とします。そして、その知的資産としての情報の維持管理を次世代に継承する中で、さらなるデータベースの発展に資することを目的とする法人です。
 併せて、『源氏物語』が海外でも幅広く理解されることを願い、『源氏物語』のダイジェスト版の多言語翻訳や海外の研究者との懇談会も実施します。このような、国際的な日本文化の理解を深める活動にも取り組みます。
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【変更後】
(特定非営利活動の種類)
第4条 この法人は、その目的を達成するため、次に掲げる種類の特定非営利活動を行う。
 (1)社会教育の推進を図る活動
 (2)学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
 (3)国際協力の活動
 (4)情報化社会の発展を図る活動
 (5)前各号に掲げる活動を行う団体の運営、又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動

    ↑

【変更前】
(特定非営利活動の種類)
第4条 この法人は、その目的を達成するため、次に掲げる種類の特定非営利活動を行う。
 (1)学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
 (2)国際協力の活動
 (3)前各号に掲げる活動を行う団体の運営、又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
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【変更後】
(事業)
第5条 この法人は、その目的を達成するため、次の事業を行う。
 (1)特定非営利活動に係る事業
 ①『源氏物語』の新校訂本文により新たな研究及び読書環境を提供
 ②『源氏物語』に関する諸情報の集積・整備・公開
 ③『源氏物語』に関連する学術出版や研究支援と資料の翻字・校正及びデータ入力の代行
 ④『源氏物語』の普及のための文化交流や関連物品販売
 ⑤『源氏物語』を活用して国際的社会的に日本文化の理解を深める活動

    ↑

【変更前】
(事業)
第5条 この法人は、その目的を達成するため、次の事業を行う。
 (1)特定非営利活動に係る事業
 ①『源氏物語別本集成 続』等の学術出版の支援
 ②『源氏物語』に関する諸情報の整備と公開
 ③『源氏物語』に関する国際文化交流
 ④『源氏物語』に関連する研究支援と資料の翻字・校正及びデータ入力の代行
 ⑤『源氏物語』の普及のための講演会や懇談会及び勉強会や物品販売
--------------------------------------


【変更後】
(種別及び定数)
第12条 この法人に次の役員を置く。
 (1) 理事 4人〜6人
 (2) 監事 1人

    ↑

【変更前】
(種別及び定数)
第12条 この法人に次の役員を置く。
 (1) 理事 3人〜5人
 (2) 監事 1人
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附則
 この定款は,定款変更認証の日から施行する。

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2015年10月10日 (土)

京洛逍遥(378)京都で源氏を読む会の源氏散策(第1回目)

 いつもは京町家のワックジャパンで源氏を読んでいる会も、秋らしくなったことでもあり、京都の街中にある『源氏物語』関連の地を散策することにしました。

 今日はその第1回目として、「桐壺」巻に関係する大内裏周辺を歩きました。

 京都市が源氏千年紀の2008年に、『源氏物語』のゆかりの地として40箇所に説明板を設置しました。その内の、1番から16番までを、今日1日で歩きました。
 プランニングと下見は、いつものメンバーである石田さんが担当してくださいました。
 次の地図の赤で示した矢印が、今回の行程です。


151010_map


 お昼前に、千本丸太町の交差点角にある「大極殿跡前」の児童公園に集合し、ここをスタート地点としました(市バス「千本丸太町」すぐ横)。

 以下、2008年に私がこのコースを歩いた際の記事のアドレスを、参考までに引きながら記していきます。
 そして、今回掲載する写真は、その時と違っているものや、新たに目に入ったものに限定しています。

「説明板16-大極殿跡」(2008/4/10)

 ここは、何も変わっていません。ただし、歩道の縁石に設置されていた建物群の指標は、今回その6個すべてを確認しました。また、道路に埋め込まれた表示も。その写真を列挙します。

 まず、南北に走る千本通の西側から。


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 この千本丸太町の交差点を東に渡り、大極殿跡がある場所の向かい側を北に向かって進みます。
 それぞれの指標が、千本通を挟んで東西に向かい合っています。


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 少し行ってすぐの小路を右に曲がった突き当たりに「建礼門跡」があります。

「説明板13-建礼門跡」(2008/6/14)

 7年前と何もかわっていません。

 狭い道を北上すると、すぐに下立売通りに出ます。
 ここを左折すると、立て続けに3箇所に説明板があります。

「説明板8-紫宸殿跡」(2008/6/9)

「説明板 6-蔵人町屋跡」(2008/6/5)

 ただし、「6-平安宮内裏蔵人町屋跡」だけは、平日以外はシャッターが降りていて見ることができません。今日は、土曜日だったので、残念ながら見られませんでした。


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「説明板 7-内裏内郭回廊跡」(2008/5/31)

 ここの石碑の写真を、7年前には掲載するのを忘れていたので、ここで今日の写真で補っておきます。


151010_10kairoato


「説明板14-宜陽殿跡」(2008/6/10)

 この「宜陽殿」の説明文中の中ほどにある「若紫」という巻名は、今は「若菜上」に訂正去れています。古い写真や資料などを使って授業や説明をなさっている方は、お気をつけください。
 参考までに、現在の訂正された説明板の文章を掲載します。


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 お昼ご飯は、この一帯をぐるっと回ってからここに立ち戻り、「ショップ&カフェ 綾綺殿」でいただきました。

 次は、内裏の東端から少し外にある説明板です。

「説明板1-平安宮内裏跡」(2008/7/11)

 さらにコの字型に回り込んで「建春門跡」へ行きました。

「説明板12-建春門跡」(2008/5/15)

 ここを東西に走る道は、まさに説明板のメインストリートとでも言うべき場所で、目白押しに『源氏物語』の縁の地となっています。

「説明板11-温明殿跡」(2008/5/19)

「説明板10-昭陽舎跡」(2008/5/20)

 そして、この通りはかつてとは様変わりで、ゲストハウスが並ぶ一角となりました。
 「承香殿東対」「承香殿西対」「参の局」「弐の局」「壱の局」「弘徽殿の南邸」と、各ゲストハウスが並んでいます。


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「説明板5-承香殿跡」(2008/5/24)

「説明板3-弘徽殿跡」(2008/5/30)

「説明板4-清涼殿跡」(2008/5/25)

 この「清涼殿跡」から「淑景舎(桐壺)跡」まで、どれくらいの距離があるのか、歩数を数えてみました。

 「清涼殿跡」からすぐ北の「梅壺」まで70歩。

「説明板2-凝華・飛香舎跡」(2008/5/30)

 そして、「梅壺」から北進してすぐの出水通りを右折して「淑景舎(桐壺)跡」までが125歩。
 結局、清涼殿から桐壺までは〈195歩〉でした。
 私は少し歩幅を狭くして歩きました。同行の女性陣とほぼ同じでした。
 今度「桐壺」巻を読む時の参考になります。

 この周辺は、家の取り壊しと立て替えが急ピッチで進んでいました。
 数年後に来ると、この西陣の一角はまた様変わりしていることでしょう。


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 食後、予定よりも早く回ったので、少し北に上がった場所に足を運んで解散となりました。

「説明板15-平安宮大蔵省跡・大宿直跡」(2008/7/28)

 なかなか充実した半日となりました。
 内裏があった頃と較べて、今はまったく雰囲気が異なるとはいえ、その距離感は体感できます。

 今回経巡ってみて、建物の名前の呼び方に注意が向きました。

 「仁寿殿」のことを、綾綺殿の前の説明文には「にんじゅでん」と振り仮名があり、平安宮内裏跡の説明文には「じじゅうでん」と振ってありました。私は「じじゅうでん」と言ってきました。

 また、「宜陽殿」(ぎようでん)と「宣陽門」(せんようもん)も、あらためて聞かれたら迷うところです。

 こうしたことは、他にもたくさんあります。
 「紫宸殿」を私は「ししいでん」と読みます。しかし、一般的には「ししんでん」としています。有職読みとでもいうものなので、どちらかに決することもできないのでしょう。「有職」も「ゆうそく」と「ゆうしょく」と2通りの読みがあります。
 とにかく、どちらかを明記して、別の読みも示す、というのが一番いいと思います。

 ワックジャパンで源氏を読む会は、次回は11月7日(土)に京都ライトハウスで開催される「点字百人一首」に参加します。見学だけですが。
 ハーバード大学本「蜻蛉」を読むのは、12月から、ということになります。
 
 
 

2015年7月31日 (金)

日比谷でハーバード本「蜻蛉」巻を読む(その17)

 今回の翻字者育成講座は、昨日のブログに書いたように、福島県立盲学校の渡辺先生と古写本の触読に関して面談をした直後の、午後6時半からの開講でした。

 折角の機会なので、あらかじめ講座を運営なさっている部署の了解を得た上で、渡辺先生にも参加していただく段取りを整えていました。受講者のみなさまと一緒に、全盲の方を交えて変体仮名の翻字学習を進めました。

 そんなこともあり、この日は見開き1丁分を頑張って読みました。1字でも多く渡辺先生に確認していただき、触読の感想を聞きたかったからです。

 まず、ナゾリが認められる2カ所についての確認からです。もっとも、目が見えない渡辺先生には、こうしたナゾリの部分の判読には参加してもらえません。ここは晴眼者が役割を担う部分です。

 この2カ所については、下に書かれている文字の判断を保留したい旨を伝えました。写真版を見れば見るほど、次第に自分の認定に疑念が生じたからです。


150729_nazoriiki


 「伊」(14丁裏1行目)の下に「以」があるようです。しかし、どうも下の文字は「以」ではないようにも思われます。

 同じことは、「幾」(14丁裏3行目)の下に「久」が認められます。しかし、じっと見ていると、下の「久」の認定に疑念が残ります。書きさしたようにも見えます。

 これは、原本を再度実見しないと確定できないと思い、そのことを正直にお話しました。
 これまでに、ハーバード大学にある原本は3回確認しています。しかし、ここを丹念に見たのかどうか、今思い出せません。
 次世代への引き継ぎ事項にしておきましょう。

 また、この写本では、「奈」の字体が一定しません。非常に不安定な「奈」なのです。


150731_na


 これは、この「蜻蛉」の書写者が「奈」の平仮名を苦手としていたのか、またはこの字で書写の雰囲気を変えようとしていたのか、その理由が今は思い当たりません。ご教示をお願いしたいところです。

 「寸」については、8行目の字体が極端に異なります。これは、行末だったために平たくなったものではありません。
 これも、この書写者の筆癖の一つとして挙げておきます。


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 15丁表の4行目の「し」にミセケチのような2本線が見えます。テキストは白黒なので、これが紙の繊維なのか汚れなのかゴミなのか、判別がつきません。
 この日はカラー画像を持っていなかったので、次回に結果をお知らせすることにして、先に進みました。

 ここは、次のようになっています。


150731_gomi


 紙面のシミが、くっきりと確認できます。
 やはり、カラー画像は、こうした時の確認に必要です。

 次回は、8月20日(木)に15丁裏から読み始めます。
 
 
 

2015年7月12日 (日)

京都でハーバード本「蜻蛉」を読む(第21回)

 共立女子大学で収穫の多い触読の確認をした後は、タクシーを飛ばして東京駅へ急ぎました。
 翌11日(土)に、京都のワックジャパンで『源氏物語』を読む会があるためです。
 仕事帰りの妻とは新幹線のホームで待ち合わせ、車中で晩ご飯となりました。

 京都駅に降り立つと、祇園祭の宣伝がそこここにあります。
 山鉾が立つ場所が、ウインドーケースの中の地図上に示されています。
 今年も観光客で賑わうことでしょう。


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 別のウインドウには、各町内の手ぬぐいが展示されていました。
 今年は、どこの山鉾の粽と手ぬぐいをいただくか、まだ決めていません。
 もし可能であれば、昨年から再興された大船鉾を狙っています。昨年は、行った時にはあまりの人気で売り切れだったからです。


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 JR京都駅の在来線の改札口には、各山鉾の提灯が揚がっていました。


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 京の街は、7月17日の前祭山鉾巡行に向けて、しだいに盛り上がって行きます。

 昨日(土)は、蒸し暑い曇天でした。
 東京よりも風が生暖かくて、肌に纏い付くような空気に包まれています。
 賀茂川沿いにワックジャパンを目指して、自転車で下りました。
 いつものように、鷺は相変わらずのポーズで、この温い風に身を任せています。


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 ワックジャパンでは、ハーバード本「蜻蛉」巻を読み続けています。
 第21回目となる11日は、東京の日比谷図書文化館の講座に参加なさっている方が、暑い中をお出でくださいました。
 また、この日から、同志社大学の2回生の若者も参加してくれたこともあり、賑やかなメンバーで進みました。

 次の写真の左上は、東京のお客様からのお土産「彩果の宝石(日本橋オリジナル)」です。
 いつものように、娘からの差し入は、祇園祭の和菓子でした。

150711_gionmaturi


 上右は北尾の「祇園祭」、左下が二條若狭屋の「麩焼き煎餅・京の祇園祭」、右下が金谷正廣の「香魚」です。「香魚」は、鮎を表現した和菓子で、みなさん一番の関心が集まった逸品となりました。

 さて、勉強会ではまず私が、前日に共立女子大学で触読できる学生さんと出会えた報告をしました。その内容は、昨日の本ブログに記したとおりのお話です。

「古写本『源氏物語』の触読に関する【朗報】(共立女子大学の事例)」(2015年07月11日)

 これまでにも、折々にこの京都の輪読会でも触読の話をしていたので、みなさんも興味深く聴いてくださったようです。

 「蜻蛉」巻については、前回詳しく確認できなかった「侍従などに会ひて〜」の箇所にある他本の61文字もの異文について考えました。
 このことは、前回の記録として書いたブログの記事「京都でハーバード本「蜻蛉」と『十帖源氏』を読む(第20回)」(2015年06月21日)を、さらに詳しく説明しながら確認しました。

 問題の異文を持つ写本には、『源氏物語別本集成』の文節番号「520320」から「520684」までが欠文となっているのです。350文節もの長文なので、内容に大きく関わります。

 この欠文箇所を『国文学解釈と鑑賞別冊 源氏物語の鑑賞と基礎知識 No.28 蜻蛉』(伊藤鉄也編、至文堂、2003年)の小見出しで示すと、次のようになります。


「匂宮、訃報を聞き、時方を宇治へ遣わす」
  ※以下、当該写本が欠く内容
「時方、宇治に到着。侍従に会う」
「時方、浮舟急死と聞くも、なお不審」
「侍従、時方に真相をほのめかす」
  ※以下、当該写本が諸本と同じ内容となる
「母君、宇治に到着」

 この欠文は、匂宮の命を受けて時方が宇治に行く下りに該当する部分なのです。
 長文の欠文がありながらも、この時方の宇治行きの部分がなくても、文章はうまくつながっています。
 ここは、『源氏物語』の形成過程が窺われる例になるのではないか、という問題提起に、この日は留めておきました。

 こうした例は、「鈴虫」巻で500文字以上の異文を持つ国冬本の例が思い起こされます。二千円札の裏面には、国宝『源氏物語絵巻』の「鈴虫」巻の本文「十五夜の〜」が引かれています。しかし、その「十五夜の〜」の直前で、国冬本は長大な異文を伝えているのです。
 このことは、『源氏物語の異本を読む—「鈴虫」の場合—』(伊藤鉄也著、臨川書店、240頁、2001年)で詳しく述べたことなので、今は省略します。

 平安時代に物語作者によって最初に書かれた本文が、推敲の過程で削除され、物語がさらにそこからあらためて語り続けられる、というパターンを考えてみると、物語が生成して発展する姿がうかがえて興味深い異文のありようとなるのです。

 そうした可能性がある場所である、ということを確認してから、先に進みました。

 ナゾリの部分がいくつか出てきました。それ以外は、特に難しい変体仮名は出て来ませんでした。

 前回で『十帖源氏』は「明石」を終えたことから一時休止となったので、この日は「蜻蛉」巻の勉強で終わりです。

 お客様と新人が参加されていたこともあり、地下鉄今出川駅真上のワールドコーヒー店で、しばらく自由気儘な歓談となりました。

 次は、予定していた8月8日(土)は休会とし、第22回は9月12日(土)の午後1時から3時までとなりました。

 こうした活動に興味と関心がおありの方は、事前に連絡をいただければ資料を用意してお待ちしています。本ブログのコメント欄を利用して、気軽にお知らせください。
 
 
 

2015年6月25日 (木)

日比谷図書文化館での体験講座の後に夜行バスで奈良へ

 日比谷図書文化館で、第4期となる体験講座が午後6時半からありました。

 古写本『源氏物語』を読んでみたいと思っておられる方が、とにかくたくさんいらっしゃることを実感します。
 これは今後とも続けて行かなくては、という思いを強くしました。

 20時に終わってから少し参加者の方とお話をしました。

 松野元国文学研究資料館館長をご存知の方や、国文学研究資料館の崩し字講座を受講なさっていた方などなど、多彩な方々がお出ででした。

 この講座が「翻字者育成講座」となっていることについて、「育成」の意味をよく聞かれます。
 変体仮名が読めるようになり、さらには『源氏物語』の本文データベースの構築をお手伝いしてくださる方を育成する、という講座の趣旨を説明しています。

 終わるとすぐに、新宿駅へ向かいました。

 新宿から出る夜行バス「新宿−奈良・五條線」に乗るためです。
 明日の朝10時に、奈良県にある天理図書館へ行くことになっています。

 新宿にある京王プラザホテル(都庁側玄関前)から、夜11時の出発です。その乗り場を探して、半時間ほどさ迷いました。以前はすぐにわかったのに、乗り場が変わったのか、表示もなくて大変でした。

 結局は、京王プラザホテルの方に乗り場まで案内していただきました。これでは、初めての者にはわかるはずがないと思います。ここから乗られる方は、お気をつけください。

 歩き疲れた姿を見て、気の毒に思われたのでしょうか。ホテルのロビーで待つように言われました。館内放送が10分前にあるそうです。

 この記事をアップしてから、案内があれば乗り込むことにします。
 
 
 
 

2015年6月21日 (日)

京都でハーバード本「蜻蛉」と『十帖源氏』を読む(第20回)

 明け方から雷雨に驚かされました。
 御所の南側にあるワックジャパンへ行く途中で、出町柳にある三角州前の飛び石は、水嵩が上がっていたので渡れません。
 親子が残念そうに、川の流れが急なのを呆然と見つめておられました。お父さん渡ろうよ、という子供の声が聞こえそうです。そうでした。今日は父の日でした。


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 今日は、最初は文学や日本語に関する談義で始まりました。
 文学部はいつまで持ちこたえられるのか、日本語はどうなっていくのか等々、この『源氏物語』を読む会は年代がまちまちの方々の集まりなので、おもしろい話に展開していきます。
 自由に自分の考えが言える場は、大変貴重だと思っています。毎回、このフリーディスカッションを楽しみにしています。

 しゃべり疲れた頃に、娘の差し入れである和菓子でティータイムです。


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 今日のお菓子は、「おとぎ草子」という、一寸法師や桃太郎などの昔話をテーマにした、かわいい和菓子です。一休餅で知られる吉廼家という、北大路通り沿いの室町西入ルにある京菓子屋さんの作品です。みんなでいただくには、ちょうどいいミニサイズで、楽しくお話をしながら口にできます。

 写真上の直角三角形の小豆が載った餅は、この時期に関西では馴染みの「みなづき」です。昨日の記事で、桝形商店街の入口にある和菓子屋さんの店頭にも、このお菓子の名前が掲げられているのが写真に写っています。

 この「みなづき」は、関西ではスーパーやコンビニでも売っています。しかし、関東ではデパートなどの大きなお店でないと、中々手に入れられません。
 この時期でいうと、この「みなづき」と共に「鱧」も関東では入手が難しいので困っています。

 一息いれてからは、『十帖源氏』の「明石」巻を読みました。この巻は、今日で最後の1丁が終わりました。最後は和歌が続くので、あっという間に終わったのです。

 京都での『十帖源氏』は、「須磨」と「明石」の2巻を読んで来ました。
 東京が「葵」で一旦休止しているので、京都もこの「須磨」「明石」を終えた所で一時休止とします。

 両都のデータの整備と準備ができたら、また再開します。今しばらくの休業です。
 
 『十帖源氏』を読んだ後は、ハーバード大学本「蜻蛉」の写本の確認をしました。
 京都では、今年になってからは一旦巻頭に戻り、「変体仮名翻字版」としての字母の確認を進めています。翻字の方針が変わったからです。

 それに加えて、今日は異文のことが大きな問題となりました。

 次の画像は、ハーバード本「蜻蛉」の3丁裏と4丁表の両端3行分をカットしたものです。
 ここで、朱の傍線を施した部分を見てください。


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 まず、右端の「个し〈改行〉きみよ」とあるところについてです。

 ここは、諸本のすべてが「けしきみ」としています。つまり、ハーバード本の「よ」は単純なミスによる衍字だと説明されるものです。しかし、ことはそんなに単純ではなくて、次のような本文を持つ写本が伝わっているのです。


けしきみけすはひか事もいふならむいとあやし

 この写本に「けしきみ」とあることから、ハーバード本の「けしきみ」の「よ」は、即座に衍字だと簡単に片づけられないのです。

 「よ(与)」と「に(尓)」は、崩し字の字形が酷似するので、ハーバード本の親本の背後には「けすはひか事もいふならむいとあやし」という異文の存在が想定できます。

 ここを、『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「蜻蛉」』(伊藤鉄也編著、新典社、210頁、2014(平成26)年)では、「よ〈ママ〉」としておきました。問題があるので、さらに諸本の翻字を確認してから確定するように、判断を保留したところなのです。

 さらには、「けすはひか事もいふならむいとあやし」という異文は、実はこの後に出てくる、写真左側の朱の傍線を施した部分「けすはひ可事もいふなりと」にも関連します。この文は、先の「けしきみけすはひか事もいふならむいとあやし」という文を伝える写本には見当たらないものだからです。その本では、「あんないせよ」から後しばらく諸本が持つ文章は伝えていないのです。

 次に、写真の真ん中で朱の傍線を引いた箇所に注目してください。
 このハーバード本では「とこ」に続けて「ろなうさ者可しく」と続いています。この「とこ」に関して、諸本では「ところは」と「ろは」があります。
 ここも『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「蜻蛉」』では「とこ/〈ママ〉」としてあります。

 前記の異本がここを「うつし心なう」としているので、ここでもハーバード本の背後には、今は不伝の本文がありそうです。そのために、ここで「とこ」と中途半端なままの語句が書写されることとなった、と言えるでしょう。単に「ところ」の脱字だとか「ろ」の目移りだけでは済まない箇所なのです。

 さらにもう一点。
 上記写真の後ろから3行目に「しゝうなと尓阿ひて」という文を朱で囲っておきました。ここでも異本には、次のような長文の異文が記されています。


侍従なとにあひてありさまをたにきけとのたまはする御けしきいとしのひうてけるにいとをしうていてたつとてさへあやにくにかきくらしたりかしこには

 これだけ長い文章だと、この鎌倉時代に書写された異本の異文は無視できません。単なる誤写では済まされないからです。

 こうした文章の背後にある別の本の異文のありようは、今はまだ翻字された『源氏物語』の写本が非常に少ないので、比較検討して考察するには基礎資料が少なすぎます。

 『源氏物語』の写本を一冊でも多く翻字すべきことを喫緊の課題として、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉が翻字作業を展開しているのは、こうした問題を解決する手だてとしての基礎資料を作成し構築するためです。

 とにかく、翻字された『源氏物語』があまりにも少ないので、ここで取り上げた〈ママ〉とせざるを得なかった箇所や異文についても、これ以上は研究が進められないのが実情です。
 『源氏物語』の本文研究の発展のためにも、「変体仮名翻字版」の作成に、1人でも多くの方のご協力をお願いしているところです。

 もっと「変体仮名翻字版」の翻字作業が進むまで、今はこうした断片的な箇所での本文異同などの問題提起をし続けていくしかありません。
 
 京都のワックジャパンで『源氏物語』を読む会は、次は7月11日(土)の午後1時から3時までです。『十帖源氏』がひとまず終わったので、後半がなくなったために、3時で終わりますのでお気をつけください。

 8月の日程も決まりました。
 8月8日(土)の午後1時から3時までです。
 これも、興味のある方々の参加をお待ちしています。

 自転車で賀茂川を遡っていた帰り道で、急に雨が降り出しました。少し止んだかと思うと大降りです。全身が濡れたついでに、鞍馬口橋の手前から小雨に烟る北山を撮影しました。


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 家に辿り着いた後に、また豪雨となりました。何とも不安定な天気です。今年の夏が思いやられます。
 
 
 

2015年6月17日 (水)

第4回 池田亀鑑賞授賞式・記念講演会(演題変更)

 第4回目となる池田亀鑑賞は、滝川幸司氏の『菅原道真論』(塙書房、2014年10月)に決定しました。

 その授賞式と記念講演会等の詳細がまとまり、「池田亀鑑賞公式サイト」より案内のチラシが公開されました。


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 この授賞式には、毎回多くの方々が参加してくださいます。
 過疎の山村と言われる小さな町に、しかもお堅い国文学の専門的な内容にもかかわらず、熱心に会場にお出でになる方が多いのには、いつも感激しています。
 池田亀鑑の生誕の地だけあって、探求心に富んだ風土があるように思われます。

 昨年の第3回授賞式の様子は、次の記事で詳細に報告しています。

「第3回池田亀鑑賞授賞式」(2014年06月29日)

 恒例となった受賞者の記念講演の後は、今回は若手大学院生の研究発表となります。若手の発表というのは、これまでになかったことです。若者を育てる意味からも、思いきって企画したものです。

 それに続いて、古写本『源氏物語』を変体仮名に注目して読むことで、池田亀鑑の業績を追体験する体験講座もあります。私が担当するもので、今回が3回目となります。テキストは、歴博本『源氏物語 鈴虫』(今秋、新典社より刊行予定)を使います。

 日南町には、岡山と鳥取から行くことができます。
 お気軽に足をお運びください。
 多数の方のご来場をお待ちしています。
 
 
 

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2015年6月 2日 (火)

レターパックの発送間違いを追跡調査で知る

 『源氏物語』の写本を翻字していただいている方に、新たに依頼する資料をレターパックで送りました。送ったはずでした。

 しかし、札幌から帰ってすぐの昨日、その方に送った写本のことで内容確認をメールでしている中で、まだ届いていないことがわかりました。

 レターパックの追跡番号で経過を調べたところ、先週27日に立川から送った資料は、何と29日にNPO法人〈源氏物語電子資料館〉の事務局がある京都の家に届いていることになっていました。送りたい方には届いていなかったのです。
 何がどうなっているのか、とっさに状況が理解できません。

 考えられることは、「お届け先」と「ご依頼主」の欄を書き間違ったことしかありません。
 札幌出張の直前にあたふたと送ったので、「from」と「to」の宛て先欄を間違ったのでしょう。
 大失態です。


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 大急ぎで、次にお願いしようと思って用意していた資料を、再度レターパックで送りました。今度は大丈夫です。
 先ほど、今度は届いた、という連絡をいただきました。

 いやはや、小まめに連絡をとりあっていたからこそわかったことです。
 早めに対処できて助かりました。
 この次に、京都へ帰ったら、間違って送ってしまったそれを、またお願いしている方に転送します。

 初めてのことなので、こんな勘違いをしたことが信じられません。
 と同時に、加齢と共に注意力も散漫になっていることを自覚すべき時期だと、自分で痛感しています。

 今、多くの方々に支えられて、さまざまな仕事を推進しています。
 みなさん、私を信頼してくださっています。しかし、こんなヘマもするのだ、ということを、自信をもってここに報告します。

 私をあまり信用しないでください、ということではありません。
 みなさん、それぞれの立場で、自分のペースで確実に一歩ずつ進んでください、ということを伝えたいと思って、こうして記しています。

 あまりにも多様な仕事を、今私がこなし過ぎていることも原因の1つです。そのため、きっちりとやっているはずだ、と決めつけずに、折々に順調だけど大丈夫かな、というセルフチェックを忘れないでいただきたいと思っています。

 こんなミスもしています、という、関係者への事務連絡でもあります。
 
 
 

2015年5月21日 (木)

ハーバード大学本「蜻蛉」巻の紛らわしい「者(は)」

 日比谷図書文化館で、ハーバード大学美術館蔵『源氏物語「蜻蛉」』を読んでいます。
 今回は、変体仮名の「者」がさまざまに書かれている例を確認します。
 1文字を見つめていただけでは、その識別が難しいケースが多いのです。

 次の一覧は、第10丁裏から12丁表にかけて見られる、「者」の種々相を並べたものです。


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 右から2つ目の「者し」の「者」が、一般的に知られているひらがなの「は」に相当します。
 それ以外の「者」は、いろいろな崩しとなっています。

 左端などは、すぐには「者」と読めない崩し様です。
 これなどは「気配(けはい)」の意味を文脈から読み取って、そこで「者」だと決め打ちしているところがあります。

 また、左から3つ目の「者」も、「乳母は」という語句から、迷わず「者」と翻字します。
 文脈の理解が、ややこしい文字の翻字を助けているのです。
 しかし、これらを1文字だけ取り出されると、しばし悩むことになります。

 現在は、「蕎麦(そば)」の変体仮名の表記として、「楚者」という文字を蕎麦屋さんの暖簾などで見かけます。
 また、賀茂川に架かる北大路橋には、次の銘板が嵌め込まれています。


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 ここには、「きたおほぢ者し」と書いてあります。

 「者」が、日常生活から遠ざかったひらがなとなっているだけに、この「者」は今後とも悩ましい存在として立ちはだかる文字だといえます。

 とにかく、こうした例を確認していく中で、変体仮名に慣れ親しんでいくしかありません。
 
 
 

2015年5月18日 (月)

京町家ワックジャパンで『十帖源氏 明石』を読む

 世界各国の方々に幅広く『源氏物語』を知っていただくためには、江戸時代に刊行された『源氏物語』のダイジェスト版である『十帖源氏』がいいだろう、ということでこの勉強会がスタートしました。しかも、翻訳しやすい現代語訳を目指しているため、毎回、ああでもない、こうでもないと悪戦苦闘しながら取り組んでいます。

 京都では「須磨」から読み始め、まだ次の巻である「明石」が終わっていません。

 まず、翻字を「変体仮名混合版」に書き替えることから着手しています。
 その際、これまで濁音については、可能な限り翻字するときに付けていました。しかし、「変体仮名混合版」になったことも考慮して、『十帖源氏』の本文に濁音がない場合は付けないことにしました。
 一例として、国文学研究資料館蔵本(初雁文庫、112コマ2行目、行末部分)の場合を例に引いて、説明します。


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 これまでの翻字では、これを「とはず語に」としていました。
 しかし、「変体仮名混合版」では「と八春語尓」となります。
 ここで、「春」に濁点を付けるのはおかしいので、あえて元本にない濁点は翻字にもつけないことにしたのです。

 今日は、以下のようなことも問題となりました。

(1)『十帖源氏』で「明石の上」としている所は、翻字ではそのまま「明石の上」としておいて、現代語訳で「明石の御方」に統一することとなりました。

(2)「紫の上もり聞給八ん」の訳は、「紫の上が他人から聞くのも」としました。「漏れ聞く」という日本語を他言語でどう訳せるかを検討した結果です。

(3)「み可と御めのなや三をもく」の訳は、「朱雀帝は再びひどく目を患い」としました。「悩み」と「病」が「重く」なったことについて検討した結果です。

 昨日もお知らせしたように、次回は、6月21日(日)の午後1時から5時までです。
 この日で、20回目の『源氏物語』を読む会となります。
 京都で日曜日に行うのは初めてです。日時にお気をつけください。

 また、その次の第21回は7月11日(土)の午後1時から5時までです。
 この日は土曜日です。原則毎月第2土曜日に集まっています。
 興味のある方々の参加をお待ちしています。
 
 
 

2015年5月17日 (日)

京町家ワックジャパンで『源氏物語』を読む(第19回)

 明け方の雨も上がり、お昼から晴れてきました。
 昨日の葵祭の後、夜になって雨になったのです。
 昼間の行列に影響がなかったので幸いでした。

 自転車で御所南にあるワックジャパンへ向かいました。
 賀茂川の鷺たちも、初夏を迎えて水温む川瀬で休らっています。


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 一羽の鷺が、みごとに着地するところを見ました。


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 ワックジャパンの部屋の隅には、芍薬(?)が飾ってあり、気持ちよく咲いていました。


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 いつものように、まずはハーバード大学本「蜻蛉」を読みます。
 実は、このワックジャパンの『源氏物語』を読む会でハーバード大学本「蜻蛉」を読むのは、2月以来のこととなります。
 本年正月より、従来の翻字方法を一大変更したことを受けて、「変体仮名混合版」で確認を進めてきました。それが、久し振りの翻字再開となったこともあり、がんばって1丁(2頁)分を読みました。

 最初に問題にしたのは、ひらがな「お」の字母は本当に「於」なのか、ということです。
 今日読んだところに出てきた、2箇所の「おもふ」(右2丁表・左2丁裏)をあげます。


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 文字の崩しを見ていると、どうも「於」から「お」には素直に変化していないように思えるのです。書道を専門となさる方がどのようにおっしゃっているのか、まだ調べていないので今はよくわかりません。

 しかし、『くずし字解読辞典 普及版』(児玉幸多編、平成9年新装6版、東京堂出版)の当該箇所の例示を見ると、右列と左列ではうまく文字の変化が追えないのです。今後ともさらに調査と確認をしていきます。


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 その他、「者(は)」「世」「支(き)」などが、紛らわしい字体でした。
 3丁表7行目まで、丁寧に読み終え、一旦休憩です。

 今日の娘からの差し入れは、奈良で400年以上も続く老舗「菊屋」の和菓子でした。
 季節を目と舌でも味わいながら、700年前に書写された『源氏物語』を読んで行きました。


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 『十帖源氏』については、明日の記事とします。

 次回は、6月21日(日)の午後1時から5時までです。
 この日で、20回目のハーバード大学本『源氏物語』「蜻蛉」を読む会となります。
 京都で日曜日に行うのは初めてです。日時にお気をつけください。

 また、その次のも決めました。7月11日(土)の午後1時から5時までです。
 この日は土曜日です。原則毎月第2土曜日にしています。
 興味のある方々の参加をお待ちしています。
 
 
 

2015年4月25日 (土)

NPO法人〈源氏物語電子資料館〉第3回総会が無事に終了

 本日は早朝より、東京都中央区にある新富区民館で、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の第3回総会が開催されました。
 会場は、東京駅から次の駅である八丁堀駅からすぐにあります。
 宿舎からは徒歩で27分という近いところです。しかし、連日の疲れが溜まっていたので、電車で行きました。15分で着いたのには、その近さに驚きました。


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 午前9時より1時間は、これまでの本会の活動内容を確認した後、本年1月より取り組み出した「変体仮名混合版」の作業について、自由に意見交換をしました。
 実際に翻字のお手伝いをしてくださっている方々も参加なさっていたので、実体験に基づく貴重な意見を伺うことができました。みなさん、昨秋から翻字に取り組まれたのが初めてだった、という方々ばかりです。

 本会の活動で特筆すべきことは、現今のひらがなに置き換える従来の翻字から「変体仮名混合版」に変更したことです。本年1月に、一大決心をしての変更でした。しかし、変更となっても違和感がない、という報告を受けて安堵しました。

 今までよりも正確な翻字となり、書写されている文字を読み取る楽しみが増した、ということのようです。

 例えば、「阿」という文字は「あ」とはせずに、書かれた変体仮名のままに「阿」と翻字するのです。無理やり現在一般に使われているひらがなに置き換えることなく、書かれたままの文字で翻字をするのですから、確かに翻字にかける労力の負担は軽減されています。頭の中で文字を今使われている文字に置き換える作業をしなくてもいいのです。案ずるよりも産むが易し、ということでしょうか。

 この翻字の方針については、まだ広く知られていません。これまでは、一部の方が、しかも部分的に翻字をなさっていたことに留まっていました。それを、『源氏物語』という膨大な量の写本の翻字でやろう、ということなのです。しかし、近い将来、この「変体仮名混合版」へ移行したことを、大英断として評価してくださることでしょう。現今の翻字表記は、原本に戻れないという大きな問題を抱えているからです。

 ただし、明らかに漢字として表記されている文字にどう対処するかは、依然まだ検討事項として保留したままです。これについては、いろいろと意見をいただきました。もうしばらく、「変体仮名混合版」の翻字の実践をする中で、解決策を模索していきたいと思います。

 その他、多くの有益な意見を頂戴しました。また、本年度取り組む具体的な作業内容についても、詳細な点まで確認しました。

 さらには、本日の総会で一番重要だった「定款の改定」についても、みなさんの了解をいただけました。
 本日の議事録は、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉のホームページなどを通して、近日中に公開されますので、その時に解説を加えるつもりです。

 無事に、本法人も3年目をスタートさせました。
 正会員は16名という、小さな小さな特定非営利活動の法人組織です。しかも、『源氏物語』を専門とする正会員の研究者は5名です。これは、意外に思われているようです。それでも、いい情報を整理・作成・公開さえしていけば、おのずと支援してくださる方は増えていくことでしょう。

 多くの方々のご理解とご支援をいただく中で、よりよい『源氏物語』の翻字本文を作成します。そして、それを次の世代に引き継いでいきたいと思います。
 今後の活動を、あたたかく見守っていただければ幸いです。
 
 
 

2015年4月21日 (火)

NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の第3回総会開催のご案内

 今週12日(土)に、下記の要領で平成27年度NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の総会を開催いたします。

 今回は、定款の変更に伴う内容(活動の目的・種類・事業に関する第3〜5条)等を審議します。


■開催日時:4月25日(土) 9:00〜12:00
■開催場所:東京都中央区 新富区民館  
・住所: 東京都中央区新富一丁目13番24号 
・TEL:03-3297-4038
・URL: http://chuo7kuminkan.com/about/shintomi.html
■アクセス:
・東京メトロ日比谷線・JR京葉線八丁堀駅下車A3出口 徒歩5分
・中央区コミュニティバス(江戸バス)[北循環]新富区民館30番 0分

 なお、午前9時より1時間は、これまでの本会の活動内容を確認した後、本年より取り組み出した「変体仮名混合版」の作業について、自由に意見交換をする予定です。

 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉に興味と関心をお持ちの方は、本会の活動内容を知る機会ともなりますので、どうぞお気軽に参加してください。
 その際、資料の用意がありますので、前日までに本ブログのコメント欄を使って、参加の連絡をお願いします。
 
 
 

2015年4月14日 (火)

翻字における「ん」「も」「む」の対処

 「変体仮名混合版」による翻字を進めています。その中で、「ん」の字母に関する問題について、現時点での説明を記しておきます。
 「ん(无)」と見える仮名文字をどう翻字したらいいのか、ということです。
 これは、初めて翻字をなさった方から、必ず受ける質問でもあります。判断に戸惑う例なのです。

 「む」とすべきか「も」とすべきか、文章の意味を考えながら決めていては、現代人の賢しらでの解釈をしてしまった翻字になります。それを避けながら、判断は次の世代に託すこととして、今は見えるままの形の「ん(无)」としています。

 ハーバード大学本「蜻蛉」では、こんな例が確認できます(3オ4行目)。


150415_wonna


 これを、私は「をんな」と翻字しています。「ん」と見える文字の字母を推測すると、「をむな」でもよさそうです。しかし、今は「ん」としているのです。

 これ以外にも、次のような例があります。


「あ【ん】ない」(4オ6行目)(←あ【む】ない)
「事と【ん】」(8オ1行目)(←事と【も】)
「ね【ん】須」(46ウ3行目)(←ね【む】須)
「ひ【ん】可し」(61ウ8行目)(←ひ【む】可し)

 この中で、「事とん」は「事とも」と翻字すべきなのではないか、と思われるかもしれません。


150414_kototon


 崩し字辞典には、「も」の字母として「ん」が挙げられているからです。
 意味を考えると、可能であれば「事とも」としたいところです。しかし、それを認めると「んめ(梅)」とか「んま(馬)」等の場合に、「もめ」とか「もま」と翻字する可能性が出てきて悩むことになります。現代の中途半端な知識で「も」にすることに躊躇して、書かれたままの「ん」にしておくのです。

 この「无」については、京都女子大学の坂本信道先生が最近の成果を論文の形でまとめておられます。これに関連する問題点の詳細は、次の論文をご覧ください。


「写本における「无」文字消長 ─藤原定家自筆本を中心に─」(今西裕一郎編『日本古典籍における【表記情報学】の基盤構築に関する研究』第Ⅱ号、2014年2月)

 まだ結論の出ていない問題なので、翻字を進めておられる方には、かえって混乱させることになったらお許しください。今は、とにかくよくわからない問題があるのだ、ということに留めていただき、どんどん前を見て進んでいただければ、と思います。

 翻字をしていると、日本語はまだまだ調べなければいけないことが多いことに直面させられます。わからないことだらけだ、ということから、いろいろな勉強をすることになります。そして、またさらに疑問が湧いてきます。

 こうした疑問点や問題点は、みんなで共有することで、少しでも有益なデータ作成につなげていきたいと思います。今の浅知恵で拙速にならないように、暫定的なものを残しながら翻字を進めているところです。
 
 
 

2015年4月 8日 (水)

『十帖源氏 桐壺』の現代語訳を更新しました

 『源氏物語』のダイジェスト版(梗概書)である『十帖源氏』は、江戸時代初期に野々口立圃(1595年〜1669年)が編纂したものです。
 この『十帖源氏』の多言語翻訳を目指して、翻字と現代語訳のプロジェクトを進めて来ました。
 2011年9月に第9巻「葵」までを終え、現在は多言語に翻訳しやすいように、折々に手を加えています。

 海外で翻訳された『源氏物語』は、アーサー・ウェイリーの英訳『源氏物語』(全6巻、大正14年〜昭和8年)を用いることが多いようです。その第1巻(「桐壺」〜「葵」)に収録された「葵」巻までを参照しつつ、各国でその国の言語に翻訳していることがほとんどです。
 そのため、本プロジェクトでは、『十帖源氏』の「桐壺」巻から「葵」巻までの現代語訳を多言語に翻訳するための基礎資料を作成し、それを広く提供することを心掛けています。

「『十帖源氏』の翻字と海外向け現代語訳の公開」

 今回、この『十帖源氏』の「桐壺」巻だけを対象にして、実際に多言語に翻訳してもらいました。
 現在伊藤が取り組んでいる科研(A)「海外における源氏物語を中心とした平安文学及び各国語翻訳に関する総合的調査研究」に対してこの『十帖源氏』の情報を提供し、試験的に活用していただきました。
 多言語翻訳の結果と研究の成果は、別途本年度の科研(A)の報告書に掲載される予定です。

 この多言語翻訳を実施していく過程で、現代語訳の問題点も明らかになりました。
 そのフィードバックを反映させて、今回『十帖源氏』の「桐壺」巻の現代語訳を改訂しました。
 この第1巻「桐壺」を担当したのは、畠山大二郎氏です。

 以下のサイトから、新版のPDFがダウンロードできますので、ご自由にご確認ください。
 そして、ご意見などをお寄せいただけると幸いです。

《新版・十帖源氏「桐壺」Ver.3》

 今後とも、より多くの言語に翻訳される過程で、さらなる改訂をしていくつもりです。
 なにか疑問点がありましたら、いつでもこのコメント欄を利用してお問い合わせ下さい。
 今後とも、ご教示のほどを、よろしくお願いいたします。
 
 

2015年3月27日 (金)

畠山大二郎著『平安文学の服飾表現研究』に博士(文学)の学位が授与されました

 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の副代表理事を務めている畠山大二郎君が、博士(文学)の学位を取得しましたのでお知らせします。
 國學院大學へ提出した学位請求論文の題目は『平安文学の服飾表現研究』です。

 昨春、「NPO設立1周年記念公開講演会で直衣着装の実演」(2014年03月23日)をした際に、装束の変遷を踏まえての実演と解説をしてもらいました。その時の記事を覚えておられる方も多いことでしょう。
 一枚だけ、その着装実演の写真を再掲載しておきます。

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 また、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉のホームページからは、「国文研蔵『源氏物語団扇画帖』服飾関係分類索引・服飾関係分類索引(畠山版)」(2012年6月26日)を公開しています。
 これは、平安時代の人物の実像や、物語と絵画の理解を深める一助となれば、との思いから公開している成果です。『源氏絵』等の物語絵に描かれた人物がどのような服を身に纏っているのかがわかるようにした、畠山君の研究の一端を具体化した貴重なデータベースの一部を成すものです。
 ぜひ一度ご覧ください。平安文学作品を読む時のイメージが豊かになることでしょう。

 今回、学位が授与された博士論文『平安文学の服飾表現研究』の目次は、次のようになっています。
 第一編は作品論、第二編は文学論として実証検証的な考察、第三編は復元を視野に入れて考察した論稿で構成されています。
 これまでの地道で手堅い研究と実践が、今回の学位論文に結実しているといえます。

 本論文が公刊される日を楽しみにして待ちましょう。

 さらなる活躍が期待できる仲間の新しい旅立ちを、この場を借りて祝い報告します。


第一編 平安文学の作品論としての服飾表現
 第一章 『落窪物語』の「裁つ」
      —落窪の君の裁断行為を中心として—
 第二章 『源氏物語』の「中の衣」と「綻び」
      —「紅葉賀」巻を中心として—
 第三章 『源氏物語』の「ひきつくろふ」直衣姿
      —「松風」巻における光源氏の服飾表現を中心として—
 第四章 『源氏物語』の被け物
      —「若菜上」巻「女の装束に細長添へて」を中心として—
第二編 平安文学の中の実態としての服飾表現
 第一章 『源氏物語』の「端袖」
      —「綻び」「ゆだち」を中心として—
 第二章 『源氏物語』の「扇」
      —朧月夜の扇を中心として—
 第三章 『源氏物語』の「細長」
      —玉鬘の服飾表現を中心として—
 第四章 『源氏物語』の「柳の織物」
      —「若菜下」巻における明石の君の服飾表現を中心として—
 第五章 平安文学の「織物」
      —『狭衣物語』を中心として—
 第六章 平安文学の裳の種類
      —「薄色の裳」を中心として—
第三編 平安文化史論としての服飾表現
 第一章 平安時代中後期の服飾の復元
      —形状の問題を中心として—
 第二章 『紫式部日記』の「小袿」
      —二の宮の御五十日を中心として—
 第三章 國學院大學図書館蔵『住吉物語』絵の服飾表現
      —嵯峨野の野遊びの場面を中心として—

 
 
 

2015年3月12日 (木)

日比谷図書文化館でハーバード本「蜻蛉」を読む(12)

 日比谷図書文化館で開講中の「古文書塾てらこや」では、「特別講座」の1つとして「【翻字者育成講座】ハーバード大学美術館蔵『源氏物語 蜻蛉』を読む」があります。

 昨秋からこの講座を担当し、本年1月から始まった第2期となる全5回が本日無事に終わりました。みなさん熱心で、こちらの方がいい刺激をいただきました。

 今日の内容は、京ことばで『源氏物語』を読んでおられる山下智子さんの朗読会のチラシを配り、参加をお誘いすることから始めました。この朗読会のことは、明日にでも本ブログで詳しく紹介するつもりです。

 続いて、国文学研究資料館のパンフレットを使って宣伝をしました。日本文学に関する研究機関がこのように開かれていることをご紹介し、その存在意義などをお話ししました。国文学に関する情報発信基地となっていることを折々にお話してきたので、後は立川まで足を運んでいただくことに尽きます。

 先週調査で行っていた天理図書館でいただいた、特別本の閲覧規定も確認しました。
 閲覧前には手を洗うことや、筆記具は鉛筆だけで、鉛筆削りや消しゴムの持ち込み不可、資料の取り扱いの注意事項や、メジャーや付箋などにも注意を促す記述があります。
 仮名文字を読む講座なので、実際に原本を見る時の心構えも、最後なので触れることにしました。

 次に、日本語点字の成立事情と仮名遣いについて、中野真樹さんの近著『日本語点字のかなづかいの歴史的研究』(三元社、2015.1)を引いて説明しました。
 このことについては、まだ私も勉強中です。みなさんに伝えたかったのは、現在使っている平仮名がどのような経緯で制定されたのか、ということです。『漢字御廃止之義』を著した前島密が、明治33年4月に国字改良の趣旨から文部省が選んだ8人の国語調査委員会の委員長を務めていたことは、平仮名の制定の背景にある1つの事実として記憶しておきたいと思います。
 明治33年に「小学校令施行規則」が改正され、小学校の教科書に「字音仮名遣い(字音棒引き)」が採用されました。今わたしたちが日常的に使っている平仮名の淵源です。
 この字音仮名遣いと点字の仮名遣いが、時期的に連動しているので、その背景を知ろうと調査を進めているところです。これは、まだまだ問題提起に留まるものであり、さらに勉強してから報告いたします。

 この講座では、わかっていることばかりではなく、わからないことや理解に苦しんでいることなども、ありまののにお話しています。

 また、現在使われている点字にも、字母表というものがあることを知り、その6点点字の表もお配りしました。


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(中野真樹『日本語点字のかなづかいの歴史的研究』13頁より)



 この講座では、平仮名の字母を意識して読むように心がけてきました。それが、点字にも、字母という概念があったことを知り、日本語で意味を伝える文字としての共通性にふれました。

 さらには、点字には独自の仮名遣いがあり、そのなかでも助詞の「は」「へ」「を」については「を」以外は「わ」「え」が用いられていることも、興味深く聞いていただけたようです。
 点字では、「わたしわ まちえ ほんを かいに いきました。」となるのです。

 長音表記のこともお話しました。
 例えば、私の名前をローマ字で書くと「ITO」「ITÔ」「ITOH」「ITOU」などと表記できます。平仮名で書いても、「いとう」「いとー」「いとお」等も正しいかどうかは別の問題として、可能なのです。表記が1つに決まらないのは、日本語で書き表す上でこれでいいのでしょうか。
 私自身で説明できないことを、勉強不足をそのままに提示しました。

 「蜻蛉」の諸本15本を校合した本文校異のブリンも配布しました。
 今日読み進んで確認する中に、つぎのような箇所があります。


めさましかりて[ハ=大平尾麦阿池御正L陽高国]・・・・520740
 めさましかりてともかくもせさせつらんなとうたかふこのうちにさやうのことしりて/前3さ〈改頁〉[保]
 めさましかりてとにかくさせてむと思ひいたらぬくまなくおさましうあやしきまゝにたゝあきれまとふこのうちに[個]

 ここで、諸本が「めさましかりて」とするところを、保坂本と個人蔵本が31字と44字という、長い異文を伝えているのです。このことについても、まだ調査が進んでいないので、この事実を伝え、諸本の翻字を進めると、こうした例がもっと見つかるはずだという話につなげました。

 『源氏物語』は、その読みが深く先行しています。しかし、それは大島本の活字校訂本文が精緻に読まれているだけであって、大島本以外にこうした異文が伝わっていることはまったく手付かずであることの問題点を指摘したのです。
 みんなで1冊でも多くの写本を翻字して、若手研究者に『源氏物語』のことを考えるための資料として渡しませんか、と。古典文学がどうのというのではなくて、写本に何が書かれているのかすらわからないままに、大島本だけが読まれている現在の『源氏物語』の研究への、誰でも参加できるところからの研究協力ともなるのです。

 そんなこんなの話をしているうちに、あっという間に終わってしまいました。

 終了後に、いつものように何人かの方から質問をうけました。

 その中で、ハーバード大学本「蜻蛉」の8丁表1行目にある「事とん」と私が翻字した箇所について、これは「事とも」がいいのではないか、というご指摘を受けました。
 ここで「ん」と翻字したのは、その文字の形が「ん」なので、見たままの形での「ん」としていることを、凡例を踏まえてお答えしました。しかし、崩し字辞典には「も」の中に「ん」があるので、それであれば「事とも」とした方がいいのではないか、という疑問でした。
 あまり時間がなかったこともあり、「んめ(梅)」とか「んま(馬)」等の例を引いて、「ん」の字母をどう判断するかという難しさをご説明したかったのですが、その場ではうまくお伝えできませんでした。申し訳ありません。
 次に機会がありましたら、こうしたことをお話したいと思っています。
 短時間での対応で申し訳なかったので、ここにお詫びかたがた記しておきます。
 
 
 

2015年3月 7日 (土)

鎌倉期の古写本『源氏物語』の正確な翻字をめざして

 お昼前に、仲御徒町でMさんと待ち合わせをし、喫茶店で『源氏物語』の翻字について打ち合わせをしました。
 Mさんは、日比谷図書文化館で翻字の講座を受講なさった方で、今は歴博蔵中山本「行幸」を読んでくださっています。
 一通り最初の翻字を終えられたので、データベースとして仕上げるための記号の使い方の確認や、今年から方針を一新した「変体仮名混合版」にグレードアップするためのコツをご説明しました。

 初心者ですとおっしゃいます。しかし、すでに翻字はしっかりとできているので、次のステップであるデータ入力もお願いしました。河内本のテキストデータをお渡しし、それを中山本の翻字データに作り替えていくものです。

 みなさん、最初は白紙から翻字をするものだと思っておられます。しかし、実際には、よく似たデータに手を入れて改変しながら完成させるのです。一種のマジックのような操作で、新しい翻字データができあがります。必要最低限の修正で、河内本が中山本に変身するのです。

 ただし今年からは、これまでのような原本に戻れない簡略版の翻字をするのではありません。明治33年に一字一音に統制された平仮名で誤魔化した翻字ではなくて、現行の平仮名にない文字は、その変体仮名の字母で表記するものです。そのために、手間はこれまでの数倍かかります。しかし、自信を持って次の世代に引き渡せるデータが出来上がります。

 わからないことや不明な点は、とにかく〈ママ〉としておくこと。そして、後ろを振り返らずに、ひたすら前へ前へと読み進め、入力を続けていってください、とアドバイスをしました。
 翻字データを作成する時は、前だけを見て、迷ったら〈ママ〉として、また前へ、というのが一番です。次の担当者が補ってくれるので、そこは信頼関係です。自分で勝手に解決しないことです。

 翻字のお手伝いをしていただき、そのデータが次の世代に引き継がれていくことは、素晴らしいことだと思います。小さなことでも、駅伝のように襷を手渡してつないでいくことで、膨大な『源氏物語』の本文のデータベースが次第に精度を高めて構築されていくのです。
 ここで私にできることは、写本を読んでくださった方のお名前や、データを入力してくださった方のお名前をデータに付載し、明記することです。非営利活動の一環なので薄謝しかお渡しできません。それだけに、お名前だけは次の世代に語り継ぐ責務がある、と思っています。

 どうひっくりかえっても、鎌倉時代に書写された『源氏物語』の翻字データベースは、私が生きている間には完成しません。しかし、一文字ずつ、一巻ずつでも翻字を進めていけば、その折々に活用できるデータベースとして提供でき、お役にたつことでしょう。とにかく、膨大な写本が手付かずのままに放置されているのが現状です。今あるのは、江戸時代に手が加えられた大島本に関する情報だけです。その大島本ですら、写本を正確に翻字した「変体仮名混合版」はまだないのです。これから、時間をかけて作成する予定です。

 その意味では、名前が知られている作品の割には、『源氏物語』の本文研究は大幅に遅れています。80年も停滞しているのですから。

 気の長い話です。私が生きている内に、鎌倉時代に書写された『源氏物語』だけでも、何セットかデータベース化したいものです。鎌倉時代の古写本だけで30年はかかる、と踏んでいるので、その道筋だけでもつけて、次の世代にバトンタッチしたいと思っています。

 その趣旨を理解してくださり、楽しみながら古写本『源氏物語』を読んでいただける方が数人でもいらっしゃることは、本当にありがたいことです。

 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉という組織を立ち上げ、そこでデータの作成からデータベース化、そして次世代への継承を果たすという趣旨の活動は、少しずつではあっても着実に進展しています。

 この活動を通して、一人でも多くの方の理解と協力が得られ、一文字でも『源氏物語』の写本に写し取られている本文がデータベース化されるよう、気長にNPO活動を続けていきたいと思っています。
 
 
 

2015年2月28日 (土)

京都で『源氏物語「蜻蛉」』の写本を読む(第16回)

 前回から、翻字は「変体仮名混合版」で確認しています。
 こうした翻字は前例がないということもあり、いろいろと問題点が噴出します。
 その一端は、当日のブログに書いた通りです。

「「変体仮名混合版」を後押しする手厳しくもありがたい批判」(2015年01月17日)

 今日も、この「変体仮名混合版」の確認をしました。もっとも、進んだのは3行半だけ。まさに、牛歩の歩みです。

 まずは、いつものように季節季節の京都らしい和菓子をいただくことから。

 昨夜、娘が届けてくれたのは、京菓匠 鶴屋吉信のお雛さまをイメージしたお菓子でした。


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 お内裏さまとお雛さまの銘は、お干菓子「雛祝い」。
 左右に置いてある小箱には、有平、コハク、落雁、金平糖などが入っています。
 細い棒状のものは「鶴屋吉信ようかん雛まつり」で、「小倉」「抹茶」「キャラメル」の3つの味が楽しめるものです。
 ただし、娘からのメールによると、血糖値が上がるので私は口にするな、と。

 日本のお菓子は、単にいただくだけでなく、目で見て、触って、飾って楽しめるのがいいところです。口に放り込んで、それが甘ければいいだろう、では留まらない所が日本の文化だと言えるでしょう。

 参加されていたみなさまと一緒に、いただく前に上掲の写真のような配置に並べてみました。鶴屋吉信さんには、何かお勧めがあるかもしれません。しかし、特に書いてなかったので、こちらで勝手にそれらしい配置をしてみました。関西風に、お内裏さまは向かって右になっています。

 また、春節で中国に帰省していた庄さんからは、香港の春節のお菓子をいただきました。


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 雛祭りとお正月が一緒に楽しめました。

 そんな中で、記録しておくべきことを以下に残しておきます。

 目が不自由な方々がこのハーバード大学にある写本が読めるようになるためには、続け字(連綿)が大きな壁となります。
 しかし、昨日の広瀬浩二郎さんの反応を思うと、仮名が続いている場合は、ある程度は連綿文字として覚えてもらえば、結果的には写本に馴染んでもらいやすいということがわかりました。多くのパターンを覚えるのが大変だとしても、そこは重大な障壁にはならないように思われます。

 例えば、今日の勉強会で出てきた箇所では、「かへり」「こと」「なく」「こゝろ」「けり」等は、一続きの文字列として覚えれば、これらが何度も出てくるので、結果的には読むのが楽になります。
 また、筆で書かれた仮名文字のありようが、実例としてイメージできるはずです。原稿用紙のマス目に文字を埋め込むような文化ではなかったことが、こうしたことから体得していただけます。
 日本文化の理解が深まる場面となります。


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 と言ってしまうと無責任なので、こうした例は、また例をあげながら確認したいと思います。

 ひとしきりお話に湧いた後、『十帖源氏』の「明石」の現代語訳に取り組みました。
 今日から、この『十帖源氏』も「変体仮名混合版」で翻字を確認します。

 問題があるとして、時間をかけて確認した現代語訳は、こんな箇所でした。

 「うれへ聞こゆ」を担当者が「愚痴をこぼします」としていた箇所は、「悩んでいます」にしました。
 「つれ/\」を「所在なさ」としていた箇所は、「退屈が」としました。

 今日から、一緒に読む仲間が増えました。
 こうした集まりに興味をお持ちの方は、本ブログのコメント欄を通して気軽にご連絡くだされば、御案内いたします。

 次回は、ちょうど2週間後の3月14日(土)の午後1時から5時まで、京都御所南にあるワックジャパンの2階で開催します。
 
 
 

2015年2月26日 (木)

渋谷氏の「源氏物語の世界」NPO法人 再編集版を公開

 渋谷栄一氏が高千穂大学を退職されるにあたり、それまでに構築して来られた『源氏物語』とその周辺に関する膨大なデータ群を、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉に委譲していただきました。
 この経緯については、以下の記事で詳細に報告した通りです。

「渋谷版ウエブサイトのNPO法人〈GEM〉への譲渡契約が成立」(2014年02月19日)

「NPO設立1周年記念公開講演会を終えて」(2014年03月23日)

 渋谷氏が公開して来られたデータベースの中でも、「源氏物語の世界 藤原定家「源氏物語」(四半本型)の本文と資料」に関しては、早くから渋谷氏のサイトにリンクを張ることで、NPO法人として広く公開し、活用していただけるようにお手伝いをしてきました。

 それ以外のもので、高千穂大学をベースにして公開されていたものは、その整理に手間取っていました。
 それが、今週(2月22日)、その再編集版の公開に漕ぎ着けることができました。
 (広報担当の中村美貴さん、根気強く対処していただき、ありがとうございました。)
 
「渋谷栄一氏より委譲「源氏物語の世界」NPO法人 再編集版」

 まだリンク切れや文字化けなどの不備が残っているかもしれません。
 これについては、一般に公開する中で、少しずつ形を整え、データの補訂をしていきたいと思います。
 お気付きの点やご要望などを、ご教示いただけると助かります。
 このデータベースも、さらに使い勝手のいいものに育てていくつもりです。
 
 
 
 

2015年1月24日 (土)

NPO法人GEMの「ニューズレター第2号」ができました

 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の「ニューズレター第2号」が発行され、以下のアドレスから公開されています。PDFとしてダウンロードできます。

「〈源氏物語電子資料館〉広報室より」(2015年1月24日 (土))

NPO法人の「ホームページ」からもたどれます。

 「ニューズレター第2号」の内容は、以下の目次の通りです。


(1)代表挨拶
(2)第三回 池田亀鑑賞受賞式
(3)鳥取県日南町で『源氏物語』を読む
(4)池田本プロジェクト始動のこと
(5)京町屋ワックジャパンで『源氏物語』を読む
(6)日比谷図書文化館で『源氏物語』を読む
(7)ハーバード大学本『源氏物語』「蜻蛉」刊行
(8)歴博本『源氏物語』「鈴虫」原本調査終了
(9)ホームページ担当者から

 念のために、多少粗いながも、以下に画像としてもご覧いただけるように公開します。
 画像をクリックすると、さらに精彩な画像で表示されます。
 各ページ下部のノンブルの順番にお読みください。


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 なお、今回のNPO法人〈源氏物語電子資料館〉のホームページでは、ノートルダム清心女子大学の原豊二先生の『源氏物語』関連情報と、京都での写本を読む会&『十帖源氏』の次回日程も更新情報として掲載されています。
 
 
 

2014年10月30日 (木)

日比谷図書文化館でハーバード本を読む(2)

 日比谷図書文化館で開催中の「古文書塾てらこや」での講座に向かう途中、霞ヶ関の交差点から国会議事堂がライトアップされているのがきれいに見えました。東京ならではの夜景です。


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 今日は、ハーバード本「蜻蛉」巻の字母を中心とした勉強会となりました。

 仮名文字の勉強のはずが、配布した10枚の資料はすべて漢字だけという、まことに奇妙なことになりました。しかし、仮名文字の元は漢字であり、仮名の元の姿である漢字を思い描きながら見ていかないと、さまざまに変形している変体仮名を自在に読むことはできません。目の前に書かれている仮名の背景に字母である漢字が揺らめいていたら、それでもう変体仮名はすらすらと読めるのです。

 ハーバード大学本「蜻蛉」の第1丁表の字母が一覧できる資料を使い、前回確認した2行目までをあらためて見直すことで、復習に代えました。
 本日印刷して配布したのは、第2丁裏までです。

 また、ハーバード大学本「蜻蛉」の全丁の字母は、次のように使い分けがなされています。
 配布した「字母集計一覧」は次のものでした。
 ここで注目したのは、赤字で示した「可=813—加=444」「多=734—太=60」「八=693—者=272—波=55」「尓=650—仁=189」の4文字の出現数です。
 これらは、現在日本語として使用している平仮名の「か」「た」「は」「に」が鎌倉時代には少数派に属する仮名文字だったことを明確に示しています。いったい、現在の平仮名はどのような根拠で今の字形に統一されたのでしょうか。平仮名を一つの字母のものに統一する、という意図はわかります。しかし、どうして今の字母の文字にしたのか、さらに調べてみたいと思います。


ハーバード大学本「蜻蛉」の全文字出現数=26,114字
-----------------------------
・止=1,330
・之=1,281
・奈=1,058
・乃=837 可=813
・幾=792 毛=791 天=789 利=757 以=747 多=734
八=693 己=664 留=653 尓=650
・良=546 久=502
・於=494 左=492 川=482 宇=461 加=444 部=435 礼=433
・比=373 万=370 三=356 給=345 无=341 也=330
・安=296 者=272 世=259 末=255 遠=252 曽=242 寸=238 人=234 計=230 知=226 与=224 女=219 不=219 个=212
・御=196 越=191 仁=189 心=181 保=169 衣=129 奴=127 由=124 呂=120 本=117 春=113 阿=103
・武=90 思=81 里=81 美=75 侍=71 能=69 祢=66 和=66 太=60 波=55 二=54 王=50 事=47 須=44 免=43 宮=42 身=33 所=31 江=29 大=29 日=28 殿=28 志=28 母=27 中=26 満=26 古=26 登=25 恵=24 将=21 我=21 累=21 物=18 又=18 為=17 堂=15 飛=15 右=14 井=13 地=13 文=13 君=12 遣=12

 もう少し詳しく文字遣いに注目してみましょう。
 開巻早々、第一文字目は「加」を字母とする「か」で始まります。「か」の字母の傾向からもわかるように、鎌倉時代は「か(可)」の方が圧倒的に用いられることの多かった仮名文字です。しかし、冒頭から「可」というのでは線が弱いと思ったのでしょうか。親本にそう書いてあったから、ということだとしても、その後の用字意識を見ても、本写本の筆写は字母にこだわりのある、インパクトのある文字選びをする人だったと思われます。


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 最初の2行だけでも、「ひ登/\」「をは勢ぬ」「もと免」「ものかたり野」「飛免きみ」と、変体仮名といっても漢字の楷書体と行書体の間の変形型に留まるスタイルで書いてあり、草書体までには遠い字形となっています。
 また、2行目には「の」「野」「乃」と三文字ともに変化をつけています。「野」のところで「能」を使わなかったのはなぜでしょうか。「の」1文字を書き飛ばしたためになぞり書きをするにあたり、文字を小刀で削るのではなくて、紙面を傷つけずに書き続ける意味からも、あえてどうだと言わんばかりに「野」と「飛」というインパクトのある文字を書いています。開巻早々でもあり、動ずることなく自信たっぷりの姿勢をみせています。この後も、「葉」や「志」などが出てきます。

 こうしたことを確認しながら、この本を書写した人のこだわりを、具体的に指摘しました。
 この写本の筆写者は自信家なのです。プライドが高く、しかも男性だと言えます。

 字母に関しては、この「蜻蛉」巻が6折で作製されており、各折で使用文字の字母の傾向が異なるのではないか、ということで、各折ごとの字母出現の集計結果も配布しました。
 例えば、第3折では、「多」が110例もあるのに、現代の平仮名の字母となっている「太」は皆無です。
 この各折における字母の出現数が異なることについては、機会をあらためて報告します。これは、この「蜻蛉」巻の筆写者が、あるいは一人ではないことから用字に揺れが見られるのではないか、という仮説を立てるとおもしろそうです。

 この講座は翻字者を養成することを目指すものなので、写本に書かれている文字をコンピュータに入力してデータベース化するための校正記号や付加情報についても説明しました。ナゾリや補入などの記述方法と扱いです。これは、次回以降に、さらに詳しく取り扱います。

 講座終了後に、いくつかの質問をいただきました。特に、上下がオーバーラップするように文字が書かれているところや、補入記号については、もっと説明すべきでした。疑問点を聞いていただくことは、自分の説明不足だったところがわかってありがたいことです。

 また、さらにありがたいことに、実際に『源氏物語別本集成』のための翻字をしてみたい、とおっしゃる方がいらっしゃいました。体験講座にも参加なさっていた方なので、三回目にして私の意図を理解していただけたのです。うれしいことです。

 次回は、こうした実作業を意識した翻字の勉強となるように、また適切な材料を用意しようと思います。
 
 
 

2014年10月16日 (木)

日比谷図書文化館でハーバード本を読む(1)

 今夜から日比谷図書文化館で、ハーバード大学本「蜻蛉」を読む翻字養成講座が始まりました。
 先々週に体験講座をし、それを受けて始まったものです。
 参加者の半数以上は、体験講座にお出でになっていた方々でした。

 最初なので、変体仮名の概略やハーバード大学本のことを確認してから、現在展示開催中の畠山記念館の葦手絵文字のことをお話ししました。
 ただし、その写真が入手できなかったので、徳川美術館にある諸道具に配された初音巻の意匠を見て、芸術化された文字を確認しました。平仮名が持つ多様性について、日常生活から離れた視点で確認しました。

 併せて、現行の平仮名書きで翻字をすることは、字母を無視して文字を置き換えていることを意識してほしい、ということを強調しました。

 「蜻蛉」巻の冒頭をみると、「かしこ尓者」と書写されていることがわかります。


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 これは、「かしこには」と翻字することになります。しかし、それは本当は正しくないのです。「尓者」は、現在この字に対応するひらがながないので、仕方なく「仁波」を字母とする「には」に置き換えているにすぎないのです。このことを自覚してほしいと思っています。我々が学校教育と社会生活の中で教えられ、学び取ったた平仮名だけでは、日本の古典籍を正確には翻字できないのです。変体仮名を文字にするときに、妥協して現行の仮名文字の範囲で平仮名を充てざるをえないのです。

 「蜻蛉」巻の本文については、前回の体験講座で一通り見たので、今日はその周辺の話をしました。前回との繰り返しになる筆順や縦書きと横書きのことなど、基本的な情報を共有することを主眼にしました。

 本講座の初回ということもあり、雑談になりすぎたかもしれません。受講者のみなさま、次回からは本文に寄り添った内容に切り替えますので、今後とも気長にお付き合いのほどを、よろしくお願いいたします。
 
 
 

2014年9月15日 (月)

視覚障害者と写本文化を共有する接点を求めて

 目が不自由な方と一緒に古写本を読む環境作りについて、あれこれと思いをめぐらす日々です。

【この課題に関して、情報を公開すると共に、併せて知的財産に関する対処も進めています。関係各位のご教示に感謝します。】

【「障害」は差別的な表現だとして、「障碍」や「障がい」と表記されたりしています。ここでは、問題点のすり替えとならないように注意して「障害」を使います。】

 さて、当面の課題実現のためには、できる限り具体的な事例で考えた方がいいと思い、無謀を承知で、ハーバード大学本『源氏物語』を俎上にあげて検討を進めています。
 そして、この課題に関して少し前が見え出したので、これまでの状況をこの時点で整理しておきます。
 
 昨日交わした、国立民族学博物館の広瀬浩二郎先生とのメールの遣り取りを通して、これまでの懸案である課題と、現在の状況、そして目の前に横たわる問題点を確認しておきます。
 
 2人の意見交換で明らかなことは、ただ1つに絞られます。
 
 私は、視覚障害者である触常者が「ひらがな」を、しかも縦書きを認識できるようになれば、触読の範囲が拡がり、ひいては古写本も読めるようになる、と考えるに至りました。
 あくまでも、見常者の立場からの私見です。

 これに対して触常者の広瀬さんは、私見の困難さを示しながらも、実現する可能性への予感と期待を寄せていただいています。
 先天性の視覚障害者が「ひらがな」を触読することは可能でも、それが実用的なレベルなのかどうかは、はなはだ疑問だと広瀬さんは言われます。線文字から点字へと発展してきた、盲教育の実情があるようです。文字を浮き出しにした初期の教材は、読み取るのに時間がかかりました。試行錯誤が繰り返された結果、点字が発明されたことを踏まえての教示です。
 浮き出し文字は読むのが大変で、触ってわかるためには、膨大なスペースが必要です。それを指先で読み取るには、これまた膨大な時間が必要だ、ということなのです。

 それでも、広瀬さんが次のように言ってくださるのは、この問題を何とかしたいと思っている私には、心強い言葉の力をいただいたことになります。


 視覚障害者の触読環境を考えてくれるのはありがたいことですし、何か新しい取り組みも生まれる予感があります。
 まずは写本の体験会など、できそうな所から始めてみるのがいいと思います。

 この理解は、私の「点字だけに頼っていては、お互いの文字体系が違うので、滑らかなコミュニケーションが取れません。また、古典文学関連の文化も共有できません。」という問いかけを真正面から受け止めておられることを示しています。

 大上段に設定した今回の私の課題は、挑戦してみる価値が十分にあるようです。
 
 
■9月14日 私から広瀬さんへのメール(部分)


 ひらがなを媒介として、見常者と触常者がコミュニケーションを図るべきだと思っています。点字だけに頼っていては、お互いの文字体系が違うので、滑らかなコミュニケーションが取れません。また、古典文学関連の文化も共有できません。

 そこで、すべての文章にひらがなでルビを振ればどうなるか、ということを、みなさんに問いかけました。
 視覚に障害のある触常者の方が、立体コピーや木を削って作成した凹凸の「ひらがな」文を、しかも縦書きも読めるようになれば、見常者と共通の文化を共有できるようになるはずです。
 点字による点訳ボランティアに頼って触常者の読書体験を支えることには、どうしても無理がある、と思っているからです。

 図書館も総ルビの本を揃え、そこに透明シートにひらがなを立体コピーしたものを貼れば、図書館の役割も変わってきます。目の不自由な方々も、図書館で本が読めるようになるのではないでしょうか。
 読み聞かせに留まっていた図書館の機能が、新たな使命を帯びることになります。

 もっとも、この考え方には、触常者の方の縦書きのひらがなが認識できる、という前提があります。
 このことには、私はなんとか可能になる方策があるのでは、と自分では思っています。いかがでしょうか。

 今回行った日南町には、豊富な森林資源があります。今回、日南町のみなさまにお願いしたことは、ハーバード大学本『源氏物語』の巻頭だけでもいいので、1ページ分を木に彫ってもらえないか、ということです。
 1枚の木の板に、800年前の変体仮名で書かれた物語の冒頭を彫って、それを教材にして、ひらがなだけでも手の感触で識別、認識できるようになれば、目の見える人と目の見えない人の距離は相当縮まります。

 その際、古写本の連綿体の文字はつながっているので、1文字ずつに切れ目を入れたものも試作できないか、ということもお願いしてきました。
 1頁に10行あり、1行に15文字ほどあります。1文字の大きさは10ミリ前後です。

 目の見えない方も写本が読める、ということと、図書館に行ってもひらがなさえ認識できれば本が読める、という環境を1日も早くつくるべきだ、と思うようになりました。

 そんなことを、日南町の方々に話したところ、町会議員さんや、林業関係の社長さんなどが早速協力したい、とのことでした。

 木材は潤沢にあるし、加工に特化した技能をお持ちの方がいらっしゃるとのことなのです。
 そこで、私からは、「須磨」巻の第1丁表を、15cm四方の板に、とにかく彫ってみることを提案しました。
 すぐに着手してみる、とのことです。
 先ずは、最初の試作版を手にしてから、次を考えたいと思います。

 とにかく、私なりに動き出しました。


 
 
■9月14日 広瀬さんから私へのメール(部分)

 さて、先生が書いてくださったご意見について。
 民博でもお話したように、視覚障害者が写本の文化に触れることは重要ですし、そこから見常者・触常者の新たなコミュニケーションが始まることにも大いに期待します。
 ある程度トレーニングすれば、先天性の視覚障害者も平仮名を触読することは可能でしょう。
 ただし、その「可能」が実用的なレベルなのかどうかは少々疑問です。
 視覚障害者の文字の歴史は(京都盲学校の岸先生からお聞きかもしれませんが)、線文字から点字へと発展してきました。
 初期の盲教育ではアルファベットや片仮名を浮き出し文字にした教材が使われていました。
 これらの教材は読み取るのに時間がかかるため、試行錯誤が繰り返され、最終的に点字が発明されました。
 浮き出し文字は読むのもたいへんだし、さわってわかるためには、それなりの大きさを確保しなければなりません。
 1冊の本を浮き出し文字で表現すると、膨大なスペースが必要です。
 そして、それを指先で読み取るには、これまた膨大な時間が必要です。
 なかなか難しいところです。

 とはいえ、先生のような研究者が視覚障害者の触読環境を考えてくれるのはありがたいことですし、何か新しい取り組みも生まれる予感があります。
 まずは写本の体験会など、できそうな所から始めてみるのがいいと思います。
 その辺のことは、高村先生(筑波大学附属視覚特別支援学校)を交えてご相談していきましょう。


 
 
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 これまでに本ブログで書いた内容の中から、目が不自由な場合の話を抜き出して見ました。
 今回の古写本を読む試みを補完する情報があるので、参考までに一覧にします。
 
 
「日南町散策と写本を木に彫る相談」(2014年09月14日)
 
「日南町でハーバード大学本「須磨」を読む」(2014年09月13日)
 
「視覚障害者が古写本『源氏物語』を書写できるか?」(2014年08月22日)
 
「京都府立盲学校の資料室(その2)」(2014年08月05日)
 
「京都府立盲学校の資料室(その1)」(2014年08月04日)
 
「京洛逍遥(332)京都芸術センターの中の前田珈琲」(2014年07月24日)
 
「読書雑記(104)中津文彦『塙保己一推理帖 観音参りの女』」(2014年07月16日)
 
「江戸漫歩(82)高田馬場の「日本点字図書館」へ」(2014年06月20日)
 
「京洛逍遥(322)京都ライトハウスにて」(2014年06月12日)
 
「目の不自由な方と写本を読むために(2)」(2014年06月05日)
 
「目の不自由な方と写本を読むために(1)」(2014年06月04日)
 
「早朝の地震の後、渋谷の温故学会へ」(2014年05月05日)
 
「西国三十三所(20)壺阪寺」(2010/10/20)
 
「【復元】縦書き & 横書き」(2010/4/21)
 
「【復元】点字本『源氏物語』(全3冊)」(2009/9/10)
 
「点字本『源氏物語』(その後)」(2009/9/9)
 
「インド人留学生の眼(2)「日本の常識の不思議」」(2008/12/3)
 
「心身(22)身体への不安」(2008/9/1)
 
 
 

2014年9月14日 (日)

日南町散策と写本を木に彫る相談

 朝は寒さで目を覚ましました。
 山々はもう秋です。


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 いつも宿泊でお世話になっている「ふるさと日南邑」の玄関には、池田亀鑑の文章と写真が掲げられています。


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 これに加えて今回、新たに大きなパネルが、食堂の横に設置されました。


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 これには、池田亀鑑の随筆集『花を折る』から抜き出した、「鳥の雑炊」と「八岐大蛇」が書かれています。亀鑑の令息である研二先生が、一字一字を丁寧に書かれたものです。

 その左には、今年6月に行われた第3回池田亀鑑賞の授賞式後に、関係者一堂が旧石見東小学校に建つ池田亀鑑の記念碑前で撮った写真が配されました。

 左端には、浅川三郎氏の歌、
「たそがれに風にゆられて山百合の
   亀鑑(きかん)と巡る幻想の小径(みち)」
も添えてあります。

 浅川氏は、この「ふるさと日南邑」の指定管理者であり、林業関係の会社の社長をなさっています。日南町のさらなる興隆のために、積極的な支援をしておられるのです。

 このようにして、池田亀鑑の業績を顕彰し、日南町との絆を確認するものが着々と根を下ろしていきます。「ふるさと日南邑」にお越しになることがありましたら、これもぜひ忘れずにご覧ください。

 浅川氏と久代氏を交えて、昨日来提案している、目の不自由な方々と一緒にハーバード本『源氏物語』を読むための相談をしました。
 林業の町である日南町の特質が活かせることから、昨日使った「須磨」巻の第1丁表を15cm四方の板に彫ってみることになりました。そうしたことに特化した技能をお持ちの方がいらっしゃるとのことです。先ずは、最初の試作版を手にしてから、次を考えたいと思います。

 お昼は、120年前の古民家「清水屋」で出雲蕎麦をいただきました。
 囲炉裏には薪がはじけていました。


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 縁側でいただくのも一興です。


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 ただし、注文してから口にできるまで、時間が止まったかのように待たされます。
 これも、また一興。
 
 
 

2014年9月13日 (土)

日南町でハーバード大学本「須磨」を読む

 鳥取県日野郡日南町で、「鎌倉時代の『源氏物語』古写本を読んで池田亀鑑を追体験してみよう(第2回)」という企画をもちました。
 これは、主催:池田亀鑑文学碑を守る会、後援:NPO法人〈源氏物語電子資料館〉、協力:新典社、で実施されるものです。

 今後とも日南町を舞台として継続する意味からも、町民のみなさま15名に加えて、今回はノートルダム清心女子大学(日本語日本文学科・原豊二ゼミ)の学生さん14名も参加されたことは、非常に意義深いものとなりました。


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 まずは、日南町と文学の関わりをわかってもらうことから。
 井上文学展示室と松本文学展示室を案内していただきました。日南町は、井上靖と松本清張と池田亀鑑に縁の深い町なのです。
 そして、図書館を見学した後、みんなでいっしょに昼食となりました。
 その時に出た割りばしの箸袋に書かれていた文字を、その後の古写本を読む勉強会の枕に使いました。


140913_otemoto


 この箸袋には、「御手茂登」と書かれています。まさに、変体仮名で書かれているのです。身近なところに変体仮名が生きていることを、この箸袋から実感してもらえるいい機会となりました。

 第1回の前回は、ハーバード大学本の第52巻「蜻蛉」の巻頭部分を読みました。
 今回は、同じハーバード大学本でも、第12巻「須磨」の巻頭部分を読むことにしました。
 「須磨」は、読みやすい字で書写されています。変体仮名のほとんどが、今と共通する字母で書かれています。「蜻蛉」の時には5行程度しか読めませんでした。しかし、今日は10行すべてを確認しながら読むことができました。


140913_yomu


 また、今回は少し欲張り、学生さんもいらっしゃることを意識して、ハーバード大学本特有の異文があることにも触れました。
 巻頭部分で、現在広く読まれている大島本で「これよりまさること」と書かれている所が、ハーバード大学本では「これよりはしたなきこと」となっているのです。「まさる」と「はしたなき」は、あきらかに異なる語句です。単なる写し間違えではないのです。

 ハーバード大学本「須磨」は、そのように読む楽しみを与えてくれる写本であることを、お話しました。
 こうした異文がハーバード大学本にあることは、これまでまったく指摘されていません。その意味を考えることは、新たな『源氏物語』を読むことにつながります。そのことを、これからという若い方々に訴えました。

 後半の20分は、目の不自由な方と一緒に『源氏物語』の写本を読める環境作りを考えている、ということを話しました。

 ひらがなを媒介として、見常者と触常者がコミュニケーションを図るべきだと思っています。点字だけに頼っていては、お互いの文字体系が違うので、滑らかなコミュニケーションが取れません。すべての文章にひらがなでルビを振り、視覚に障害のある触常者の方々が、立体コピーを活用した凹凸のひらがなが理解できれば、共通の文化を共有できるようになるのです。
 点字による点訳ボランティアに頼って触常者の読書体験を支えることには、どうしても無理があります。

 図書館も総ルビの本を揃え、そこに透明シートにひらがなを立体コピーしたものを貼れば、図書館の役割も変わってきます。目の不自由な方々も、図書館で本が読めるようになるのです。
 読み聞かせに留まっていた図書館の機能が、新たな使命を帯びることになります。
 このことは、今私が必死に取り組んでいることです。

 日南町には、豊富な森林資源があります。今回みなさまにお願いしたことは、ハーバード大学本『源氏物語』の巻頭だけでもいいので、板に彫ってもらえないか、ということです。木にひらがなを彫って、それを教材にして、ひらがなだけでも手の感触で理解できるようになれば、目の見える人と目の見えない人の距離は相当縮まります。

 目の見えない方も写本が読める、ということと、図書館に行ってもひらがなさえ認識できれば本が読める、という環境を1日も早くつくるべきです。

 このことは日南町の何人かの方に理解していただけたこともあり、早速日南町特産の木で変体仮名のカードをつくってもいい、という方が出てきました。言ってみるものです。

 このことについては、今後とも夢のある話として報告できそうです。
 どうぞ、楽しみにしていてください。
 そして、折々に手助けをしてください。
 
 
 

2014年9月 9日 (火)

鳥取・日南町でハーバード大学本「須磨」を読む勉強会のお知らせ

 今週末に、池田亀鑑生誕の地である鳥取県日野郡日南町で、『源氏物語』の古写本を読む勉強会を開催します。


■企画名称:鎌倉時代の『源氏物語』古写本を読んで池田亀鑑を追体験してみよう(第2回)
■講師:伊藤鉄也(NPO法人〈源氏物語電子資料館〉代表理事)
■開催日時:平成26年9月13日(土)午後2時〜3時半
■体験会場:ふるさと日南邑(鳥取県日野郡日南町神戸上)
■主催:池田亀鑑文学碑を守る会
■後援:NPO法人〈源氏物語電子資料館〉
■協力:ノートルダム清心女子大学(日本語日本文学科・原豊二ゼミ)

 これは、本年6月の第3回池田亀鑑賞授賞式の後で、新しい企画として実施した「鎌倉時代の『源氏物語』古写本を読んで池田亀鑑を追体験してみよう」を受けて、第2回目として開催するものです。

 前回の勉強会の案内は、本ブログ 「第3回「池田亀鑑賞」授賞式のお知らせ」(2014年06月18日)の後半で紹介した通りです。

 また、「第3回池田亀鑑賞授賞式」(2014年06月29日)の記事の後半で、その勉強会の様子などを詳細に報告しました。

 前回は、ハーバード大学本の第52巻「蜻蛉」の巻頭部分を読みました。
 今回は、同じハーバード大学本でも、第12巻「須磨」の巻頭部分を読みます。
 ハーバード大学蔵「須磨」巻については、「米国ハーバード大学蔵『源氏物語』の写本」(2013年11月25日)で紹介しましたので、併せてご覧ください。


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 なお、今回のイベントは、日南町及び周辺地域のみなさま方を対象とすると共に、ノートルダム清心女子大学の原豊二先生のゼミ合宿の中で実施するものとなっています。
 どなたでも自由に参加していただけます(無料)。
 ただし、会場や資料の準備の都合がありますので、参加希望者は、開催前日の12日(金)午後5時までに、本ブログのコメント欄を利用して参加の意向をお知らせください。

 この企画は、今後とも継続して実施します。
 第3回については、追ってお知らせいたします。
 
 
 

2014年9月 8日 (月)

京都で『十帖源氏』を読む「明石_その6」

 今回は、いつもの「ワックジャパン」ではなくて、烏丸通りを隔てたちょうど反対側にある「京町家 さいりん館 室町二条」の2階で勉強会を開催しました。
 途中で大雨と雷が鳴り響くという、最近の不安定な天候を象徴するような一日となりました。

 さて、今回はいつも『十帖源氏』の「明石」巻を担当してくださっている川内さんが、英国に出張直前ということもあり欠席です。そこで、代わりに庄婕淳さんが代理で報告者になってくださいました。

 まず、『十帖源氏』に「いぬるついたちの日の夢に」とあるところです。
 担当者の現代語訳は、「先日の一日の日の夢に」となっています。しかし、これではあまりにも逐語訳すぎて、かえって海外の方にはわかりにくいのではないか、ということになりました。
 そこで、いろいろと検討を加えることになりました。

 結果は、「今月一日の夢に」という訳です。
 「今月」ということばを頭につけたのです。
 検討を終えてみるとこれだけです。しかし、その間にみんなで意見を交換したことは、参加者の物語の理解を深めるものとなりました。これは、ぜひとも多くの方が参加され、一緒に考えながら現代語訳を作ることで、より一層『源氏物語』を読むことが楽しくなると思います。(それとなくなく、お誘いです。)

 また、原文が長くてなかなか句点が打てない場所などは、思い切って小刻みに区切りました。そうしないと、海外の方に訳してもらった時に、複雑な構文になってわかりにくいものとなる恐れがあるからです。
 その意味では、今回は短い訳文を作る訓練のような検討がたくさんなされました。

 わかりやすくしたものを列記してみましょう。


「しのびやかに」→「ひそかに」
「おほしまはす」→「思いめぐらして」
「こころみに」→「念のために」

 さらに今回の検討会で一番時間をかけたのは


しづやかにかくろふべきくま侍なんや

という箇所です。

「しずやかに」や「かくろふ」、そして「くま」という語に関して、わかりやすい現代語の組み合わせを考えるうちに、いろいろな案が出されました。
 結果としては次のようになりました。


静かに身を隠せる場所がありますか。

 いつも思います。まさに、みんなで頭の体操をしているのです。
 次回は、ちょうど1ヶ月後の10月4日(土)午後1時から、従来通り「ワックジャパン」の一室をお借りして行います。
 興味をお持ちの方の参加を歓迎します。
 本ブログのコメント欄を通して連絡をいただければ、折り返しの返信でご案内いたします。
 
 
 

2014年9月 6日 (土)

京都で『源氏物語「蜻蛉」』の写本を読む(第13回)

 今日の京都で『源氏物語』の古写本を読む会は、「京町家 さいりん館 室町二条」で開催しました。初めて借りる施設は、何かと刺激的です。


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 庭はこんな感じでした。


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 2階の部屋はイスとテーブルなので、10人ほどの勉強会にはちょうどいい場所でした。


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 今年の重陽の節句は10月2日だそうです。そんなこともあり、娘が今日届けてくれた和菓子は、甘春堂本舗の「着せ綿」というお菓子でした。


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 甘春堂本舗のホームページより、このお菓子の説明を引用します。


執筆者: 木ノ下 千栄

◆紫式部と菊の着せ綿
 『源氏物語』で有名な紫式部は、自らの歌集『紫式部集』にこんな歌を詠んでいます。
 「菊の花 若ゆばかりに袖ふれて 花のあるじに 千代はゆづらむ」
 旧暦の9月9日は、重陽の節句と呼ばれ、平安時代には前日の9月8日に菊の花を真綿でおおって菊の香を移し、その翌日の朝に露に湿ったこの真綿で顔にあてて、若さと健康を保とうとする行事がありました。これを「菊の着せ綿」といいます。
 この日、紫式部は藤原道長の北の方(奥さん)・源倫子から菊の着せ綿を贈られて大変感激したようです。当時綿は大変高価なもの。いくら道長の娘・彰子にお仕えしているといっても、自分には身分不相応と遠慮したのでしょうか。
「(着せ綿の菊の露で身を拭えば、千年も寿命が延びるということですが、)私は若返る程度にちょっと袖を触れさせていただき、千年の寿命は、花の持ち主であられるあなた様にお譲り申しましょう。」とその着せ綿を丁寧にお返ししようとしたとのことです。道長家の栄華、そして紫式部の思慮深さがしのばれる歌ですね。
 着せ綿については『枕草子』『弁内侍日記』などをはじめ、古典文学に多く記されています。今年はあなたも殿上人になったつもりで、着せ綿をしてみてはいかがでしょうか?

◆由来について
 旧暦9月9日は陰陽道の考え方から縁起のよい陽数(奇数)の最大値である9が重なることから、「重陽」と呼ばれます。五節句(人日、上巳、端午、七夕、重陽)の中でももっとも重んじられてきました。
 重陽の節句は別名「菊の宴」ともいい、古くから宮中に年中行事の一つとして伝わってきました。菊は翁草、齢草、千代見草とも別名を持っており、古代中国では、菊は仙境に咲いている花とされ、邪気を払い長生きする効能があると信じられていました。その後、日本に渡り、菊の香と露とを綿に含ませ身をぬぐうことで、不老長寿を願う行事として定着したようです。
 宮中の重陽の行事としては、平安前期の宇多天皇のころに始まりましたが、当時は特に細かい決まりはなかったようです。しかし近世に入ると「白菊には黄色の綿を、黄色の菊には赤い綿を、赤い菊には白い綿を覆う」との記述が見られるようになります。また重陽の日に菊の咲かない年は、綿で聞くの花を作ったという記述もあります。この日は観菊の宴が催され、菊の花を酒に浸した菊酒を酌み交わして、人々は延命長寿を祈りました。

◆重陽の神事 烏(からす)相撲
 重陽の日におこなわれる神社の神事として有名なのは、上賀茂神社の烏相撲です。烏相撲は平安時代に始まる、氏子児童による相撲です。上賀茂神社の祭神の祖父である「賀茂建角身命」が神武天皇東征の時、巨大な八咫烏(やたがらす)となって先導を務めたこと、また悪霊退治の信仰行事として相撲が結びついて行われるようになりました。
 当日、本殿で祭典があった後、境内細殿前庭で烏帽子、白針姿の刀祢(とね)が弓矢をもってぴょんぴょんと横跳びをしながら「カーカーカー」「コーコーコー」と烏の鳴き真似をし、小学生10数名が相撲をとります。その鳴き真似のユニークな姿にマスコミもたくさんくる、重陽のちょっとしたイベントであり、児童たちの活躍ぶりをみる、実にほほえましい行事です。
 ところで、平安時代には歴代の斎王が烏相撲をご覧になったと伝えられています。斎王の制度が鎌倉時代に途絶えてしまった後も、毎年斎王の席を用意し、神事は続けられてきました。そして平成3年に葵祭の斎王代がこれをご覧になることになり、800年ぶりに陪覧が実現したということです。 それにしても、9月といっても暑いこの時期、斎王代も正装でじっと動かず、そして扇で顔も仰ぐことも許されずに座っていなければならないなんて、大変ですね。

 今日はまず、この「着せ綿」というお菓子をいただきながら、この説明文を確認することから始まりました。
 お菓子一つを取っても、こうしていろいろなお話ができるのですから、日本の伝統的な文化は本当に楽しいものだと気付かされます。

 『紫式部日記』と『枕草子』にも、この菊の着せ綿の記事があるので、それも確認しました。
 参考までに、以下に引いておきます。


(1)『紫式部日記』(『完訳 日本の古典24』小学館)

 九日、菊の綿を、兵部のおもとの持て来て、「これ、殿の上の、とりわきて。いとよう老いのごひ捨てたまへと、のたまはせつる」とあれば、
  菊の露わかゆばかりに袖ふれて花のあるじに千代はゆづらむ
とて、かへしたてまつらむとするほどに、「あなたに帰り渡らせたまひぬ」とあれば、ようなきにとどめつ。
 
 
(2)『枕草子』(『完訳 日本の古典12』小学館)(三巻本 第7段)

 九月九日は、暁がたより雨すこし降りて、菊の露もこちたうそぼち、おほひたる綿など、もてはやされたる。つとめてはやみにたれど、曇りて、ややもすれば、降り落ちぬべく見えたる、をかし。

 さて、肝心の勉強会は前回予告した通り、ハーバード大学本「蜻蛉」の写本を読むのではなく、『源氏物語』の「蜻蛉」巻のお話の確認をしました。
 変体仮名を読むことに没頭していて、お話の確認が中途半端だったからです。

 『国文学「解釈と鑑賞」別冊 源氏物語の鑑賞と基礎知識 No. 28 蜻 蛉』(伊藤鉄也編、至文堂、2003・4)を元にして、原文・現代語訳・鑑賞・脚注・コラムなどを参照しながら、物語を追うことで内容を見て行きました。浮舟はもちろん、薫と匂宮、右近と侍従、そして時方などの登場人物の位置づけや性格にまで及びました。

 さらには、現在読んでいる『源氏物語』は紫式部1人が書いた作品ではない、という持論のもとに、この「蜻蛉」巻でも女の筆と男の筆が混在していると思われる場面なども指摘しました。

 簡単に言えば、浮舟という女性の語られ方や、取り巻きの女性の描かれ方が中途半端になっているのは、男の筆が入っているからではないか、ということです。
 反面、男性の心理描写には、女性には描けないような鋭さで語られているのではないか、ということもふれました。
 こうしたことは、その論証が難しいことなので、そのような視点で「蜻蛉」巻を読んでみませんか、という提案でもあります。

 お菓子をいただいた後は、私が喋りすぎたように思われます。
 次回は、女性と男性の心理を、討論形式で展開したいと思っています。
 この会は女性が多いので、楽しい時間になりそうです。
 
 次回は、10月4日(土)の午後1時から、ワックジャパンで行います。
 興味をお持ちの方の参加を歓迎します。
 
 
 

2014年8月31日 (日)

9月6日開催「京都で源氏を読む会」の会場変更のお知らせ

 次回(9月6日(土))の「京都で『源氏物語「蜻蛉」』の写本を読む会」と、「京都で『十帖源氏』を読む会」の会場が変更になりましたので、この場を借りてお知らせします。
 
 いつもの「ワックジャパン(WAK JAPAN)」ではなくて、今回に限り、「京町家 さいりん館 室町二条」の2階に変更となりました。


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〒604-0011
京都市中京区冷泉町65(室町通二条上る東側)

京都市営地下鉄 烏丸線「烏丸御池」駅 2番出口徒歩5分
烏丸線「丸太町」駅 6番出口徒歩4分
京都市バス 烏丸二条 から徒歩3分
烏丸丸太町から徒歩8分
 
 これまでのワックジャパン(WAK JAPAN)とは、烏丸通りを挟んで反対(西)側になります。
 
 参加を予定なさっている方は、お間違えのないようにお気をつけください。
 
 初めての方も大歓迎です。
 資料の用意がありますので、本ブログのコメント欄を活用して、参加を希望する旨の連絡をいただければ、折り返し説明などのメールを差し上げます。
 
 参考までに、前回(7月19日)の活動内容をまとめた記事へのリンクを以下に引用します。
 参加を検討なさる際の参考にしてください。
 
「京都で『源氏物語「蜻蛉」』の写本を読む(第12回)」(2014年07月19日)
 
「京都で『十帖源氏』を読む「明石_その5」」(2014年07月22日)
 
 
 

2014年5月16日 (金)

NPO法人の書類を持って烏丸御池を走る

 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の法人市民税のことで、ひたすら走って走って、地下鉄烏丸御池駅の真上にある担当窓口に駆けつけました。なんとか間に合いました。そして、本法人関係者には朗報を伝えることができることとなりました。

 万博の年(1970年)に、ソルティー・シュガーの「走れコウタロー」がはやりました。
 あの歌そのままに、この痩せ細った身体に鞭打って、


〜ここでおまえが まけたなら おいらの生活 ままならぬ 走れ走れ コウタロー〜

という、運動会でいつも流れるコミックソングよろしく、空間移動を果たした甲斐があったのです。

 目指す先は、烏丸御池にある〈京都市行財政局税務部法人課法人市民税担当〉の窓口でした。
 過日、この窓口で説明を受けました。それは、京大病院の近くにある左京税務署で本会の法人税が免除されたのを受けて、法人市民税はどうするのか、ということでした。その時には、結局5万円を今月末までに支払うこととなりました。
 しかし、その後いろいろと調べているうちに、これも免除対象となることがわかりました。多分に私の勉強と認識の不足が原因です。

 そこで、再度その確認と相談に行ったのです。これは、法人として収益事業をするかどうかで決まるものだそうです。過日の説明では、事務所にかかるものだとのことだったので、京都市内に事務所を持つNPO法人としては当然支払うべきものだ、と判断していました。ただし、収益事業をしていない現状と実態から、設立時に提出していた内容の変更手続きなどをすることで、本年度は免除ということになりました。一安心です。職員の方の丁寧な説明と柔軟な対応に感謝します。

 2年目を迎えたNPO法人〈源氏物語電子資料館〉は、まだ十数人の正会員による会費だけで運営しています。そのため、こうした免除はありがたいものであることを、身に滲みて感じます。

 今は、写本を読んでいただいた方々に、僅かですが謝金をお支払いしています。
 この地球上に存在する『源氏物語』の写本すべてを翻字する、という目的を果たすためにも、みなさんの理解と協力を得ながら、前を向いてコツコツと歩んでいるところです。

 近年の傾向として、かなで書かれた写本が読める方が少なくなりました。その数の減少は顕著です。そこで、昨年10月に『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』(新典社、185頁、1600円+税)を刊行しました。
 さらに、今月末には、その続編となる『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「蜻蛉」』(新典社、210頁、1800円+税)が書店に並びます。

 1人でも多くの方が写本を読めるように、この2冊の本が、かな文字を学ぶための入門のテキストになれば、と願っています。
 この世に存在するすべての『源氏物語』を翻字してデータベース化するためには、墨で書かれたかな文字が読める方々を確保する必要があります。そのための人材開発と育成に、このハーバード大学所蔵の古写本を有効に活用していくつもりです。

 まだ産声を上げたばかりのヒヨコ組織ではありますが、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉は、こうした目標を実現するための仕組みを構築している段階です。
 その成果が示せるまで、今しばらく時間をいただきたいと思っています。
 そして、かな文字が読める方から「写本を読みますよ」という連絡を待っているところです。

 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉については、積極的な宣伝・広報活動はしていません。
 「NPO法人〈源氏物語電子資料館〉のホームページ」は小まめに更新していますので、折々にのぞいて見てください。

 
 
 

2014年4月19日 (土)

NPO法人〈源氏物語電子資料館〉第2回総会を終えて

 少し肌寒かった今朝、自転車で聖路加国際病院に隣接する東京都中央区明石町区民館へと向かいました。
 今日は、特定非営利活動法人〈源氏物語電子資料館〉の第2回総会がある日です。

 会場は、越中島の宿舎を出て相生橋と佃大橋を渡ってすぐの所にある施設なので、自転車で10分もかかりません。

 佃大橋から隅田川の上流を望むと、中央大橋の向こうに東京スカイツリーが見えます。

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 橋上から隅田川を振り返ると、目指す先である聖路加タワーの間に東京タワーが見えました。
 通りかかった遊覧船の左手奥には、ビルに挟まれて茶色い尖り帽子の明石町区民館が見えます。遊覧船の向かう先には、勝鬨橋も見えています。

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 自転車を漕ぎながら橋を渡るのが気持ちのいい朝です。

 会場である明石町区民館は、落ち着いた雰囲気の建物でした。

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 その2階の一室で、総会を持ちました。

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 詳しい内容に関することは、「NPO法人〈源氏物語電子資料館〉のホームページ」に譲ります。

 ここでは、私なりにその要点をメモとして残しておきます。

 昨年度の事業報告や活動決算と、今年度の案を確認しました。
 また、役員の内で理事2名の変更により、若返りを図ることとなりました。
 次の世代へと、確実にバトンタッチが行われています。

 私が昨秋より科研費の研究代表者となったため、今後のNPO法人の活動は科研と重複しないように、活動内容について慎重に検討を重ね、確認しました。
 それは、科研の研究期間と重なる今後3年間、NPO法人では『源氏物語』の本文に関するデータベースを構築することに専念する、ということが主たるものです。これは、科研費の研究内容である「海外源氏情報」(科研HP)と、その内容が被らないものだからです。

 公私混同と思われることを避け、経費の流用には十分すぎるほどに細心の注意を払い、それぞれの運営をしていくことになります。今回の理事の交代は、そのための対処でもあります。

 昨年の活動では、『源氏物語別本集成 続 第8巻』で扱うはずの第32巻「梅枝」と第34巻「若菜上」の翻字がほぼ終わった、との報告がありました。
 『源氏物語』の絵画における服飾関係の索引も、ホームページから公開しました。
 『源氏物語』のどの古写本が、現在どこに所蔵されているのか、ということの調査も一通り終わりました。これは、今年度の公開を目指してデータの整理をしていただいているところです。

 目に見える活動としては、東京と京都で『十帖源氏』の多言語翻訳のための現代語訳を作成するプロジェクトが、これまで通り順調に進んでいます。
 また、京都では、ハーバード大学本『源氏物語』「蜻蛉」巻の古写本を読む勉強会も、快調に回を重ねています。
 先月は、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の設立1周年記念の公開講演会も実施しました。

 こうした活動を振り返ると、弱小ながらも、よく組織として活発に動いていると思います。

 基本方針に、無償のボランティア活動にならないようにする、ということがあります。
 些少でも謝金をお渡しするように努力しています。

 しかし、如何せん、資金という面での背景も蓄積もないので、まだまだ努力目標です。写本を読んだり、古写本に関する情報を整理していただいても、十分な謝金が渡せないことを、申し訳なく思っています。
 それでも、苦しい資金繰りの中で、みなさんのご理解とご協力のもとに、着実に実績に結びつけることができていることに、感謝の思いを忘れないで運営をしているところです。

 いろいろなイベントをしたいと思っています。しかし、今のこのNPO法人〈源氏物語電子資料館〉には、体力も資金も乏しいのです。当初の目的を実現するには、程遠いことは事実です。
 しかし、これは理解が拡がり、そして深まれば、自ずと解消出来ることだと楽観的に構えています。

 NPO法人のホームページやブログのアクセス数も、しだいに多くなって来ているのは、明るい話題です。
 当分は、地道な活動とその広報で、本会の存在意義を訴え、理解を求めていきたいと思っています。

 現在の会員は27名です。
 正会員の年会費が1万円なので、本会の事業規模は推して知るべし、というところです。
 また、スポンサーもないので、これらは今後の大きな課題です。

 さらには、本会の会員の内で、『源氏物語』の研究者は私を含めて4名です。
 この研究者の少なさには、意外に思われることでしょう。
 これは、現在の『源氏物語』の研究が、『新編日本古典文学全集』に代表される活字校訂本文による研究が主流であり、それが実質的には9割以上を占めるという実態の反映である、と私は理解しています。
 つまり、『源氏物語』の古写本に関する情報は必要がない、という研究者の現実があるのです。
 しかし、活字校訂本文だけに頼った研究は、時流と共に変質していくと思われます。
 共通本文としては大島本しか流布していない『源氏物語』の本文の供給の実態は、それがいかに歪んだ研究環境にあるのか、ということに少しずつ疑問を持つ若手研究者が現れています。
 将来的に、本文に対する見方は変わってくる可能性が高いと言えます。
 また、そうあるべきです。
 活字校訂本文による読書感想文と、写本を基本とする本文研究の距離が、あまりにもありすぎます。現代人のために提供されている活字校訂本文による研究と、平安時代の物語を研究することの位相の違いを、もっと自覚したいものです。

 そのような中で、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉では、地球上に現存する『源氏物語』の写本すべてを翻字し、データベース化しようとしています。研究のための基盤を構築することが急務だと思うからです。まさに、『源氏物語』を研究するためのインフラの整備を、当面の課題としているのです。

 この件についての理解が行き届いていない現状は、まだこの会の存在を訴える力が弱いことも背景にあると言えます。広報と宣伝が不足していることは自覚しています。そのこともあり、今は身の丈に合った活動に留まっているのが実情です。

 今は会費のみの運営なので、思うような活動はできていません。
 しかし、古写本を読むことを中心として少しずつであっても実績を積み上げていれば、それが存在意義を理解していただくことにつながり、支援してくださる方々も着実に増えていくはずです。そのこと期待し、楽しみにしているところです。

 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉では、『源氏物語』に関する基礎的なデータを、これからも構築し、ホームページを通して公開していきます。そして、それを若い世代に引き継いで行くことを、活動の根幹としていきます。

 コツコツと運営を続けていきますので、今後とも変わらぬご支援のほどを、どうかよろしくお願いいたします。
 
 

2014年3月23日 (日)

NPO設立1周年記念公開講演会を終えて

 昨日、東京国立博物館からの帰りに、夕食は外食でした。しかし、一口二口ほど肉を口にした直後から食道が詰まった感じになり、まったく喉を通らなくなりました。

 今朝からも、状況は変わりません。しかし、イベントは待ってはくれません。
 非常によくない状態で、本日の「NPO設立1周年記念公開講演会」に臨みました。
 それでも、みなさんに迷惑をかけることもなく、無事に終えることができました。
 スタッフのみんなに感謝しています。

 私の開会の挨拶の後は、山本典子先生から『絵入源氏物語』と『古今類句』の寄贈を受ける儀式です。

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 続いて、私がモデルとなり、直衣着装の実演です。これは、畠山大二郎氏の平安文学研究者としての視点から、装束の変遷を踏まえての解説を交えて進みました。
 千年来、現代に継承されてきた装束を通して、平安時代の衣装ないしは『源氏物語』の衣装を知る手掛かりを得よう、という趣旨での実演です。

 私が白小袖を着た状態で、舞台の幕が開きました。

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 まず、単を着ます。

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 次に、指貫を穿きます。文様がある指貫は公卿以上だそうです。今回使用したのは引上式で、文様は八藤丸、鳥襷です。

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 そして、上着としての直衣の袍。今日は冬の直衣で、表白・裏二藍浮線綾です。
 冠をかぶり、桧扇を持つと、もう三位以上の公卿です。

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 実演の後は、渋谷栄一先生の渋谷版データベースの過去・現在・未来についての講演です。
 明日から入院して手術を控える身での、これまでのデータベース作成にまつわる講演でした。
 この膨大なデータベースを、大切に守り伝えていきたいと思います。

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 最後は、神野藤昭夫先生からの挨拶です。
 NPOへの期待と共に、組織の基盤をしっかりと作ることの大切さも語ってくださいました。

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 今日は、盛りだくさんの充実した楽しい会でした。
 また、こうした企画を立案し、ご案内いたします。

 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉も、今回の本文データベースと『源氏物語』の版本という財産ができ、活動が具体的に見え出しました。このNPOの組織をさらに意義深いものとするためにも、研究資源を次世代へとバトンタッチをするシステムを確立したいと思います。
 まだヨチヨチ歩きの集団です。より一層のご理解とご支援のほどを、よろしくお願いいたします。
 
 

2014年3月19日 (水)

NPO法人〈源氏物語電子資料館〉のニューズレター第1号発行

 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉は、昨春2月に設立してちょうど1年が経ちました。
 年度末に合わせて、初年度となる平成25年度の活動報告と、今週末に東京・築地で開催される「設立1周年記念公開講演会」に関するお知らせをまとめた『ニューズレター 第1号』(A5版、全4頁、平成26年3月18日)を発行しました。

 目次は以下の通りです。


《1頁》ご挨拶 —支援者のみなまさへ—
《2頁》渋谷版『源氏物語本文データベース』の継承
   『絵入源氏物語』と『古今類句』の寄贈
《3頁》NPO法人の印鑑
    法人設立で京都市内を奔走
《4頁》NPO法人ご支援のお誘い
    設立1周年記念 公開講演会

 各頁を画像でここに掲載します。
 また、『ニューズレター 第1号』のPDF版(表裏面と中見開き面)も、ダウンロードできるようにします。

『ニューズレター 第1号』PDF版(表裏面)をダウンロード 

『ニューズレター 第1号』PDF版(中見開き面)をダウンロード

お知り合いの方に回覧していただけると幸いです。
 
 
 
《1頁》

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《2頁》

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《3頁》

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《4頁》

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2014年3月12日 (水)

NPO設立1周年記念公開講演会のご案内

 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉を京都市に設立して1年が経ちました。

 NPO法人創設1周年を記念するイベントのことを、あれこれと思案していたときでした。院友で同級生の渋谷栄一氏と交わしていたデータベースをNPOで預かる話が、にわかに進捗し出しました。そして、渋谷氏のウェブサイトの内、「渋谷版 源氏物語の世界」とでも言うべき本文データベースのすべてが、本NPOへ委譲されることになったのです。
 このことは、すでに本ブログの「渋谷版ウエブサイトのNPO法人〈GEM〉への譲渡契約が成立」(2014/2/19)で報告した通りです。

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 渋谷氏のホームページ「源氏物語の世界」は、この18年間に230万(1日400)アクセス以上もある人気のサイトです。これをNPO法人〈源氏物語電子資料館〉で預かり、さらに若手研究者の手によって成長させていくことは、非常に意義深いことだと思います。

 今月23日(日)に、このデータベースに関連する話を、渋谷氏からうかがいます。

 また、山本典子氏からは、『絵入源氏物語』と『古今類句』の寄贈を受けました。この山本春正編『絵入源氏物語』は漆山文庫旧蔵本で、江戸時代の慶安3年(1650年)版です。旧蔵者山本節氏は、説話文学、記紀神話の専門家で、山本春正のご子孫に当たられます。約50年以上、茶箱に保管されていたものです。

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 山本氏には、この本についてのお話をうかがいます。

 その間に、私が直衣姿になる着装をご覧いただきます。
 これは、服飾を研究している畠山大二郎氏が解説しながら行なうデモンストレーションです。

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 畠山氏は、すでに室伏信助先生、神野藤昭夫先生、鈴木淳先生への着装に当たるなど、この分野では多彩な研究者です。上掲の写真は、神野藤先生に狩衣の着装をしているところです。

 今回は、渋谷氏と山本氏のNPO活動へのご理解とお気持ちに感謝して企画した、記念としての公開講演会です。
 会場は、東京の銀座から築地寄りのところにあります。参加はどなたでも自由です。難しい話はありません。文化を次の世代につないでいくことの意義が、参加者のみなさんと共有できる会になれば、と思っています。本文データベースも和古書も、次世代に引き継ぐ、大切な文化資産なのですから。
 この時期は、地方から東京にお出での方々も多いかと思います。午前中に開催する会です。ぜひ気軽にお立ち寄りください。多数の方々にお越しいただけると幸いです。
 


■■ 設立1周年記念 公開講演会■■
  —— プログラム ——
 特定非営利活動法人
 〈源氏物語電子資料館〉
 設立1周年記念 公開講演会

 日時︰3月23日(日)9〜12時
 会場︰築地社会教育会館 3階 第三和室
   URL:http://chuo-shakyo.shopro.co.jp/tsukiji
 内容︰
  挨拶 伊藤鉄也(代表理事)
  贈呈式︰山本春正編『絵入源氏物語』『古今類句』
      寄贈挨拶 山本典子
  休憩
  着装実演︰畠山大二郎(副代表理事)
         直衣着装(伊藤鉄也)
  休憩
  披露︰渋谷版源氏物語本文データベース(神田久義)
  記念講演︰渋谷栄一(高千穂大学)
  閉会挨拶︰神野藤昭夫(放送大学)
 参加対象︰広く一般の方々
 資料代︰500円

 なお、現在、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉では、以下の6つの活動を進めています。


 ・『源氏物語別本集成 続』第八巻のため、藤裏葉巻と若菜上巻の翻字。
 ・ハーバード大学本『源氏物語』「蜻蛉」の公開輪読会(京都会場)
 ・『十帖源氏』「末摘花」「須磨」の現代語訳の公開検討会(東京・京都会場)
 ・『源氏物語』の古写本の現存所蔵先確認とそのデータベース化
 ・尾州家河内本『源氏物語』のカラー版による翻字データの確認
 ・大島本に並ぶ校訂本文として池田本「桐壺」と「若紫」作成

 いずれもゼロから取り組んでいるため、まだ成果をお示しできません。しかし、着実に進んでいますので、今後の報告をお楽しみにお待ち下さい。

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2013年7月 8日 (月)

世界中の源氏写本すべてを翻字するプロジェクト始動

 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉が取り組む一番の仕事は、この地球上の、世界中にある『源氏物語』の古写本のすべてを翻字し、データベース化してみなさまに活用してもらえる環境を整え、提供することにあります。

 そのためには、『源氏物語別本集成』を継承した『源氏物語』の本文データベースを構築することです。ただし、その前提として、『源氏物語』の古写本を読んでいただく方々の協力が必要不可欠です。しかし、その協力者である『源氏物語』の古写本が読める方が、現状ではあまりにも少ないのです。

 これからは、『源氏物語』をはじめとする変体がなで書写された古写本を読める方々を、1人でも多く確保する必要があります。その意味から、『源氏物語』の古写本を読む勉強会を、まずは京都で開くことにしました。
 これは、本来なら大学の教育の中で行われてきたものです。しかし、今は教育現場でこうした取り組みが激減しています。そこで、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の活動の一環として、古写本『源氏物語』を読む会を、京都を皮切りにスタートさせることにしました。
 
 
 
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『源氏物語』の写本を読む会

鎌倉時代の写本で『源氏物語』を読んでみませんか?

ハーバード大学が所蔵する「蜻蛉」の巻をテキストに、
  物語をたどりながら、くずし字をよむ勉強会です。

■担当者:伊藤鉄也
    (国文学研究資料館・総合研究大学院大学教授)
■テキスト:(1)『国文学解釈と鑑賞別冊 源氏物語の鑑賞と基礎知識 No.28 蜻蛉』
       (伊藤鉄也編、至文堂、平成15年)
      (2)『ハーバード大学蔵 源氏物語 蜻蛉』
       (伊藤鉄也編、新典社、近刊予定)
■日時:毎月第2土曜日 午後1時〜2時30分
■場所:WAKジャパン2階
    http://wakjapan.com/ja/about-us/access-map/
■受講料:1回1000円(資料代含む)

参加ご希望の方は、npo.gem.info@icloud.com宛に、
 お名前・Eメールアドレス・電話番号
 をご記入のうえご連絡ください。

主催:特定非営利活動法人〈源氏物語電子資館〉
ウェブサイト:http://www.eonet.ne.jp/~genjiito/

 その初回は、今週土曜日の13日に、京都で開催します。
 興味と関心のある方は、奮ってご参加をお願いします。

 この勉強会では、ハーバード大学が所蔵する鎌倉時代中期という、『源氏物語』の中でも最も古いと思われる写本をテキストにして進めます。その写本が正確に読めるようになることに加えて、データベース化するにあたっての校正時のちょっとした知識も伝授することになります。

 なお、古写本が読めるようになり、データベース化の校正要領を理解なさった方には、『源氏物語』の翻字をお願いすることになります。それには、無償でのボランティアは極力廃した方針を堅持しています。つまり、些少ではありますが、謝金をお支払いします。または、図書を現物支給することでそれに代えることもしています。

 それに伴い、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の活動には、謝金をはじめとする幾許かの資金がどうしても必要です。それに関しては、今は賛助会員の方々のご支援と、この活動に理解を示してくださる正会員の方々からの会費が、当面は唯一の活動資金となります。

 会としては、また私個人としても、積極的な会員の勧誘は敢えてしていません。学会の諸先生方にも、直接はお誘いをしていません。
 少しずつ実績を示すことで、幅広い方々の理解をいただく中で支援資金を頂戴するという、気の長い方針で取り組んでいるところです。これは、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の創設の理念が、必ずいつか多くの方々に理解していただける、という信念のもとに設立メンバー各自が温めている思いでもあります。

 1人でも多くの方々のご理解とご支援をいただけることを、心より願っています。
 会員になっていただくことに関しては、「NPO法人〈源氏物語電子資料館〉のホームページの中の支援者募集」を参照して手続きをしていただくことをお願いしています。

 今後とも、温かい見守りを、どうぞよろしくお願いいたします。
 
 
 

2013年4月27日 (土)

NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の通常総会の報告

 特定非営利活動法人〈源氏物語電子資料館〉の平成24年度_第1回_通常総会が開催されました。
 場所は、日本橋公会堂の集会室でした。
 
 
 
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 まずは、代表理事を務める私が、以下のメモを配布して、この法人の基本的な確認事項をお話しました。


心構え
(1)ゼロからの出発であること
   もとより何も失うものはない
(2)みんなで実績を積み上げる
   丁寧な仕事をして信頼を得よう
(3)みんなで相談して仕事を進める
   自分だけで判断せず苦楽を共有する
(4)次世代への継承を意識する
   判断に迷ったら継続できることを
(5)ボランティアは無償の奉仕と違う
   何かをすればなにがしかの報酬を
 
取り組む課題
(1)『源氏物語』の写本すべてを翻字
   全世中の源氏写本をデータベース化
(2)『源氏物語別本集成 続』の継続
   止まっている第8巻から再開する
(3)『十帖源氏』の多言語翻訳する
   世界31言語で翻訳して公開する
(4)『源氏物語』の本文関連情報を提供
   ホームページを通してのサービス
(5)写本を読める人を育成する
   写本を読む勉強会を出前する

 続いて、五つの議案の検討と確認と承認を得ました。
 これは、平成24年度と平成25年度の事業報告や会計監査、そして事業案に関するものです。
 また、役員選任に関して、理事の交代も了承されました。
 これらの内容は、後日、ホームページで報告いたします。

 今年度実施する活動の具体的なことも、時間をかけて話し合うことができました。
 予想時間を大幅にオーバーし、3時間もの熱気溢れる意見交換の場となりました。たっぷりと、じっくりと意思の確認などを行なうことができました。

 今日は、京都や秋田という遠方からの、会員の参加がありました。
 充実した総会となりました。
 みなさまに、篤くお礼申し上げます。
 これで、今年度の活動がスムースに運びます。
 活動を始めると、いろいろな問題などに遭遇することでしょう。
 幅広い方々のご理解とご支援をいただくなかで、着実に成果を出していきたいと思います。
 ますますのご協力を、よろしくお願いいたします。
 
 
 

2013年4月21日 (日)

NPO法人〈源氏物語電子資料館〉のパンフレットができました

 本年2月4日に設立の特定非営利活動法人〈源氏物語電子資料館〉のパンフレットが、2ヶ月がかりでようやくできあがりました。

 A4版の三つ折りなので、最近普通に使われている定型封筒に入る大きさです。
 
 
 

130421_npopanflet1外側
 
 
 

130421_npopanflet2内側
 
 
 
 このパンフレットを、イベント会場やお店や事務所・フロントなどに置いてくださる方がいらっしゃいましたら、ご連絡いただければお届けします。

 その際、以下の情報を教えてください

(1)お世話くださる方の簡単な自己紹介
(2)置いてくださる場所の情報
(3)必要部数(10部程度をメドに)
(4)送付先

 上記4点を、このコメント欄か、「〈源氏物語電子資料館〉のホームページ」に記載している事務局への連絡先(npo.gem.info@icloud.com)を通じてお知らせください。

 取り急ぎ、この場を借りてのお願いです。
 
 
 

2013年4月16日 (火)

NPO法人〈源氏物語電子資料館〉から総会とイベントのお知らせ

 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の総会の開催日時及び場所が、下記の通り決定しました。

 この法人のことや活動内容などについて、もう少し知りたいと思っていらっしゃる方は、当日会場に直接お越しいただければ、いろいろと詳細なことがわかる機会ともなります。受け付けで、その旨をお伝えください。

 総会の後は、『十帖源氏』の輪読会(紅葉賀巻)を行います。このことに興味をお持ちの方は、この機会に参加して様子をご覧になってはいかがでしょう。
 午前10時頃から始まり、12時には終わります。
 飛び入り参加も歓迎します。

 また、『十帖源氏』の勉強会の後、さらにその足で出光美術館で開催中の展覧会「源氏絵と伊勢絵」を、みんなで見に行く予定です。
 この出光美術館の展示を一緒に見に行くだけの参加も、大歓迎です。
 12時までに、日本橋公会堂集会室〈第1洋室〉の前の受け付けに来てください。

 いずれも、あらかじめ連絡をいただけると、資料等の準備の都合上、大変助かります。

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特定非営利活動法人〈源氏物語電子資料館〉総会

■日時4月27日(土) 9:00〜12:00

■場所
〒103-8360
中央区日本橋蛎殻町一丁目31番地1号
日本橋区民センター内日本橋公会堂 集会室〈第1洋室〉
・受付電話:03-3666-4255
・URL:http://www.nihonbasikokaido.com/
・最寄り駅は半蔵門線「水天宮前駅」、日比谷線「人形町駅」、東西線「茅場町駅」、都営浅草線「人形町駅」。
・中央区コミュニティバスも使えます。


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2013年4月15日 (月)

ワックジャパンのカルタが京都府知事賞を受賞

 先日の記事「京都で『十帖源氏』を読む会がスタートしました」(2013年4月 6日)で、京都の活動場所としてワックジャパンをお借りしてスタートしたことを記しました。

 ワックジャパンでは、草の根の国際交流と、家庭の主婦の力を発揮した活動を展開しておられます。
 その活動成果の一つに、本ブログでも紹介した、「英語と日本語で楽しめる『茶の湯かるた』」(2013年1月13日)があります。なかなかユニークなカルタです。

 この「英語付茶の湯かるた」に、先般、京都府知事賞の奨励賞が授与されたのです。
 その実現に奔走された小川さん、おめでとうございます。
 
 
 

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 賞状には、「第一回京都女性企業家賞(アントレプレナー賞)」ともあります。
 「英語付茶の湯かるたの開発と展開」が、高く評価されたのです。

 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の活動場所の一つとしてお借りすることになった京町家が、そのワックジャパンの本拠地です。なかなか刺激的な環境とご縁ができました。ありがたいことです。

 今、京都で、鎌倉時代の古写本を変体がなで読み、〈物語〉を読み解く勉強会を立案しようとしています。ハーバード大学本『源氏物語』の写真版を資料に使う予定です。
 月1回、土曜日にワックジャパンで『十帖源氏』を読むことがスタートしたので、その日の午前中の時間帯を活用できないか、とプランを練っているところです。
 関心をお持ちの方は、連絡をいただけると、暫定的なものではありますが案内を差し上げます。

 この勉強会も、試行錯誤を繰り返しながらであっても、息の長い活動になればと願っています。
 いろいろな方からのご支援やご協力を、よろしくお願いします。
 
 
 


2013年3月18日 (月)

NPO法人〈源氏物語電子資料館〉のホームページ更新

 「NPO法人〈源氏物語電子資料館〉のホームページ」を今月8日に公開して以来、いろいろなご意見をいただきました。ありがとうございます。

 昨日と本日の2日間で、担当者の中村さんと連係プレーをはかり、よりよいものに作り直してみました。
 「どれどれ」というお気持ちでご確認いただければ幸いです。

 今回手を入れたのは、以下の箇所です。


(0)バナーの写真を桜に
(1)タブバーの表示を直す
(2)「新着のお知らせ」を左側(サイドメニュー上部)へ移動
(3)サブメニューの「口座案内」を「支援者募集」に移動
(4)サブメニューに「申請までの経過」を「挨拶」から移動
(5)各ページ下段に、広報担当者の名前を追記
(6)「代表者挨拶」を短くまとめ直す
(7)「活動報告」に「国文研蔵『源氏物語団扇画帖』服飾関係分類索引」を公開
(8)「会員HP」を修正・追加
(9)その他、こまごまと調整や補訂の手を入れる

 上記(7)の「国文研蔵『源氏物語団扇画帖』服飾関係分類索引」は、源氏絵に描かれている服飾を分類し、検索できるようにしたものです。副代表理事である畠山大二郎君の労作です。
 単なるテキストデータの流し込みです。
 用語の検索などは、お使いのブラウザの検索機能をご利用ください。
 この程度の用語集では、凝った検索は不要との判断からです。
 なお、このデータベースは、すでに本ブログで公開してきたものを再構成したものです。

 次は、『十帖源氏』の現代語訳のファイルを整理して、気軽に利用していただけるようにする予定です。
 しばらくは、こうした補訂やデータの追加を繰り返します。

 いろいろと、ご意見をいただけると助かります。
 また、お持ちのデータで、公開に適していると思われるものがございましたら、提供していただけるとありがたく思います。
 ただし、『源氏物語』の本文に関係するもので、かつ公開に問題のないものを、どうぞよろしくお願いいたします。
 
 
 

NPO法人〈源氏物語電子資料館〉広報室より

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